第26章 帰郷
喜助さんの家の寝室には、尸魂界では見ることがないと言っても過言ではないベッドが存在する。
というのも、私のそもそもの生まれが日本ではなかったためなのだが…そのためにわざわざ、まだ尸魂界に存在もしていなかったベッドを、自宅用に作ってしまったのだ。
勿論二人用なわけなのだが。
身体の感覚がふわふわして落ち着けず、まともに起き上がれない私をそちらに運ぶと、彼は隣に横になる。
『…ぁ…、喜助さんだぁ…』
「さっきも一緒にいたでしょう?寝惚けてるの?」
困ったように微笑む彼の方を向くと、腕を回して優しく…というよりは少し強めに抱き寄せられた。
『ん、…痛い』
「我慢して?これでも我慢してるんだボクも…それに安心していいよ、ボクはまだ君以外の誰ともこんな風に寝たことは無い」
『…寝てたら処してた』
「そこまでいくの?まったく…本当に一緒にいてくれちゃうんだ」
『誕生日だからこれくらいしてあげるの…』
霊子が舞う。
…嫌だなあこの身体、嘘ついてもすぐにバレちゃうじゃない、嬉しいの。
「そこまで律儀にしなくてもいいのに…姫ちゃんとまた会えて、こうして抱きしめられるのが何よりのプレゼントだよ」
『……やっぱりむかつく。何か強請ってよ、プレゼント』
「姫ちゃんが元気でい『却下。少しは物も強請れ、無欲男』い、いきなりまたどうしたんですか姫さん…」
少し動揺する彼だが、甘やかしてなんてやるものか。
人に散々今まで嬉しいことしておいてくれて、何恩も返させずにまた私のことを甘やかそうとしているんだ、ふざけるんじゃない。
『次断ったら真子のところに家出して一ヶ月あの馬鹿にご主人様呼びするから』
「じゃあ“蝶ちゃん”の世界の絶品スイーツ巡りで」
全力で阻止したかったのか即答された。
『…もっかい』
「…絶品スイーツ巡り?」
『…』
「ごめんごめん、泣かないで!!?…蝶ちゃんって名前、気に入ってるんだ本当に…似合ってるよ」
『!…えへへ』
まさかこの人にこうして呼んでもらえるなんて。
「地獄蝶の存在に気づかれちゃったのかって、最初聞いた時びっくりしたんですよ?」
『突いてきたのは能力だし、あながち間違いじゃないかも?』
「……嬉しそうだから今は蝶ちゃんて呼ぼうかな」
他の名前はどうせいつだって呼んじゃうから。
今日はよく眠れそうだ。
