第26章 帰郷
「…元々君に会いたいと申し出てきたのは彼の方だったんだが、まさか魂魄を取られてたとはね。…“エゴ”って言ってたけど…何か心境に変化はある?」
『……私、寂しかったんだって。喜助さんや真子がいなくなって』
うん、と京楽さんは返してくれる。
私の背中に向けて、返してくれる。
『…大好きだったんだって、海燕さんのこと……死んで欲しく、なかった、んだ…っ、て…』
ひくつく喉を必死に震わせて、声にする。
なんでだろう、全然知らなかった。
誰にも言ったこと、無かったのに。
今更どうしようもないことなのに。
今言ったって、何も変わらないのに。
誰かに聞いてほしかったらしい。
誰かに分かってほしかったらしい。
『わ、たし…怖かったんだっ、て……喜助さんだけは、って…思ってたのに、一人になって………どこにも行っちゃ、嫌だったんだって…』
「…君は一度も僕達に向かって言ってはくれなかったけど…どうしたかった?……本当は、どうしてほしかった?」
『…会いたかった……会えないくらいなら、私のこと…』
殺してほしかった。
私の言葉に京楽さんは少しだけ目を見開かせて、私の前へと現れる。
「……誰かに言ったことはあった?」
『…言ったら、死んじゃったの。私が、…言ったら、死んじゃった。私と一緒にいたせいで死んじゃった』
「…それで誰にも言わなかったんだ。…ほん、とに…強い子だ……」
『……いらない…強い、とか。…弱くなりたかった。弱くなったら…そしたら、誰も私に興味なんて示さない…誰も、私の大好きな人のこと連れ去ったり、しない』
背中に手を添えられて、そこで京楽さんの目が潤んでいることに初めて気がついた。
…こんな人でも、人前で泣くんだ。
「でも、君は強い…君に守られた人も……尸魂界だって、君が守った」
『…私ね、必死だったの。尸魂界の事消しちゃうんじゃないかって。…頑張ったの、頑張って祈らないようにしたの…そのために願ってたの』
私が尸魂界なんかなくなっちゃえなんて思いませんように。
私が何かを恨んだりなんかしませんように。
私が誰かに心を許したりなんかしませんように。
私が誰かに服従なんて、もうしませんように。
私が、寂しいなんてもう誰にも言いませんように。
寂しくなんて思いませんように。
こんなものが感情なら、なくなっちゃえばいいのに。
