第15章 大切な人
目を閉じて衝撃に耐えようと、体に力を入れる。
「!!!蝶ちゃん!!?早く逃げ……!!!」
敦さんの気付いてくれたような声が聞こえる。
いや、無理だよ…脚動かないし、流石に移動能力なんてここで使ったら気味悪がる人だって多いんだから。
ああそうだ、確か最初はそうだと聞いた。
私が色々なものを操れて、それを気持ち悪がったのと共に日々のストレスをぶつけられて。
別に元々、望まれて生まれてきたわけでもない。
生まれたかったわけでもない。
生き延びたくなんてなかった、とっとと死んでしまいたかった。
……お母さんやお父さんに、一度でもいいから愛してほしかった。
自分の誕生日を知りたかった。
名前をつけてほしかった。
今日という日に、色々な事が重なって…中也さんの事まで見えなくなって。
気付いた時には耳を劈くような大きな大きな音が聞こえて、私の身体は痛みに苛まれて…
『………ッ、?…あ、れ……?こ、こ…』
痛く、ない。
どこも痛くない。
おかしいな、確かにテントが崩れてきて傍にあった道具とかと一緒に…
目を薄らと開けると、砂塵と一緒に綺麗な綺麗な青空が見えた。
ああ、今日ってこんなに晴れてたんだ。
「…………ッ、焦った…死ぬかと思った……っ!!!」
『!…え……嘘、なんで?……あ、あれ?私幻聴聴こえるようになっちゃったのかな、走馬灯…?』
「走馬灯じゃねえよ…っ、この馬鹿……!!」
『だ、だってこんな所に中也さんがいるはず…き、今日中也さんが私と会えるわけが…』
「っ、お前の誕生日にお前に会いに来ねえわけがねえだろ!!!…死のうとしてんじゃねえよ……ッ!!」
私を抱く暖かい腕の温もりを感じながら、私を抱くその人が本当に中也さんなんだと認識する。
『…死のうとしてないよ。動けなかっただけ……痛いの怖くて…我慢しようと…して……ッ』
「もう大丈夫だ、さっきこのテントを崩した奴は今芥川が向かってる。…遅くなって悪かった」
『……ッ、中也さん…っ』
「ん?何でも言え、今日は特別我儘を聞いてやる日だ」
『お仕事いっぱいあったんじゃ、なかったの…っ?』
「急いで全部終わらせてきた…少し遅くなっちまったが、ちゃんとお前に会いたかった」
中也さんは私の頭に手を置いて、更に抱き寄せてしっかりと言葉にした。
「誕生日、おめでとう…今日で十五だ」
