第14章 わからない人
「中也、君今蝶ちゃんに何を…」
「……俺が邪魔ならあれでいいんじゃねえのかよ、携帯は忘れて行きやがったからまた後で返しとかねえといけねえが」
頭につい血が登って、かっとなって怒鳴ってしまった。
…こんなんじゃダメだろ俺、言ってもあいつの親代わりだったんだろ?
何してんだよ、あいつに当たったところで何も意味なんかねえってのに。
「君さ、本当に何も分からないわけ?あんな性格の女の子があそこまで殺したがる相手なんて、相当の因縁があるような相手に決まってるじゃないか。憎くて憎くて仕方の無い相手だよ?」
「親でも殺されたってんなら納得だが、親がいねえってんならそういう相手なわけでもねえんだろ?なら分から…………親…?」
「……その蝶ちゃんの親が殺されかけてたの、覚えてないのかな君は?」
「………待てよ、じゃあなんだ?…あいつ、昨日からずっと俺を殺ろうとした相手を殺したがってたってのか……!?」
そう考えれば蝶の発言の全てに筋が通る。
あいつが俺の思っている以上に俺の事を想うようなやつならば…俺の思っている以上に、優しくて繊細な奴ならば。
そして俺が知らねえほどに強い奴ならば。
「遅すぎるでしょ……っていっても蝶ちゃんに良いようにギリギリのとこで誤魔化されてきたのだろうけれど」
「なんであいつが誤魔化す必要があるんだよ!?どう考えたって俺が出た方が早ぇだろ!!相手は誰なんだ!!?」
「まあまあ、落ち着きたまえ。蝶ちゃんはそんなにやわな子じゃあない…何せ君の自慢の一番弟子だしね。………あの子が君に何も思い出させたくないのには、本人が言っていた通り君の脳への負担や精神的な面を気にしてのこと…というのもある」
太宰の含みのある言い方に眉間にしわを寄せて、ハッキリしろよと更にイライラは募るばかり。
「一番弟子も何も、あいつにはおれは足でまといっつうだけの話なんじゃねえのかよ?邪魔っつってたんだぞ、あいつが。あの蝶が」
「中也はいい加減に、蝶ちゃんの事を子供だと思うのをやめた方がいい。あの子は君が思っているよりも大人で、君が思っている以上に君の事しか考えて生きていない一途で可愛らしい女の子なのだから」
「…………えらく買い被ってんじゃねえか。何が言いてえ」
「…蝶ちゃんは怖がっているだけなのだよ。君に自分の事を知られて、もしも見捨てられてしまったらって」
