第14章 わからない人
「蝶」
『は、はい…?』
「単刀直入で悪いが………申し訳ねえのも非礼も承知で頼みがある。お前の実験データ…俺が壊しちまった分、復元して俺が見れるようにしてくれねえか」
『…………は…い…?……太宰さんに何吹き込まれたの…?』
私の纏う雰囲気が変わったからか、中也さんが動揺したような表情になる。
その隙に携帯を自分の手に取って、太宰さんに向けて言葉を紡ぐ。
『いったい何を教えてくれちゃったんです?私、まだ能力の事すらなんとか隠そうとしてる段階だったのに………なんでまたあんなもの、中也さんに見る気にさせてるんですか。あんなの見て中也さんが正気じゃいられなくなったらどうするんです?太宰さんだって一つ見るので精一杯だったんでしょう?』
「俺…?」
「だけど本人は本当に知りたいんだよ、蝶ちゃんの事。それにこれで何か思い出せるかもしれない上に、君にとっては見せたくなんかないものなのかもしれないが……これだけで、もう何も自分で説明しなくても済むだろう」
『ッ、だからって!!折角今良い具合で距離を保て始めたところなのに!!?これ以上変なところまで巻き込むように促さないでください!!!』
「ち、蝶?」
少し興奮してしまった勢いを呼吸に集中して和らげると、今度は太宰さんの方が声を少し大きくして、言い放った。
否、言い放ってしまった。
「君はそうやって、中也に離れていかれるかもしれないというのを恐れて何も思い出させないよう努めているのだろう?周りからしてみればバレバレな上に、なんともまあ可愛らしいものだが……蝶ちゃん。君は本来、しようと思えば中也の記憶を今すぐ元に戻す事くらい、出来るよね?」
「!?そんなことが…!!?」
『な……っ、…太宰さん、いい加減に「いい加減にするのは君の方さ」…何がですか』
「見ていられないのだよ、最近の君は。無理な量のものを一日の中に取り入れすぎている挙句に、その様子じゃあまた夜は寝てないのだろう?」
完全に図星だ、流石と言うべきかなんなのか。
見抜かれてる上に心配までかけてしまっている。
というか見ていられないって、もしかしてこの人私の事何回か見に来てたってこと?
『………それで?太宰さんの用事は?』
「話を逸らすのも都合が悪い時の癖だよ、本当中也以外が相手となるとそうだよね…寿命、下手に削らないようにって」
