第14章 わからない人
「どういう事も何も、蝶ちゃんが今の状況で自分から君に言えるわけがないだろう」
「そりゃあ迷惑も心配もかけてるとは思う…が、そんな余命みてえなもんと俺の記憶の何が関係ある?寧ろそんな重要な話、早くに聞いて「中也」…なんだよ」
「蝶ちゃんの身体のことを覚えていない君に、蝶ちゃんが自分の口から全て話すだなんてこと、正直に言って無理な事だ。とても小さな女の子…それも蝶ちゃんのように特別怖がりで純粋な子が口に出来るような内容じゃあない」
中也さんの目が再びこちらに向けられて、それにビクリと肩が震える。
…何を言われてるの?
全部話されちゃった?…いや、でも太宰さんがそんな風に暴露しちゃうとは思えないし……
「…以前の俺はそういった事を、どうやって教えてもらってた」
「簡単な話さ、元々教えてもらってなんていなかったのだから。…中也はその子の実験データで、覚えているものはないのかい?」
「大まかな内容くれえなら分かってるが、結果も何も覚えてはいない」
「……データは君が塵になるまで粉砕してしまったからね、相手から蝶ちゃんの情報を守るために。そのデータを見るのが一番早いのだろうけれど…どの道こんな状況じゃあ、粉砕されたデータをもう一度見られるようにするだなんて神業、一人を除いて出来るようなものじゃない」
中也さんの目が丸くなって、焦ったように電話に向かってそいつは誰だ!!?と大きな声を出す。
そいつ?……そいつって、誰?
今回の犯人のこと?
それともまた何か別の話?
「今の時間なら朝食を摂っている最中だったね?……君の目の前にいるだろう、可愛らしさに満ちた一人の天才が」
中也さんは目を大きく見開いて、ゆっくりと私を視界に入れた。
それに首を傾げてどうしたのかと心配になっていれば、中也さんが声を震わせながら喋り始める。
「そんな事が…可能なのか?………それなら、もう一度見ることが出来れば思い出せもするんじゃ…」
「ただし中身が中身だからね。本人にとっては当然見て欲しくはないものだろうし、見せるのも恐ろしいものだろうし…………それに私は、一つのデータを見ただけでトラウマになってしまったよ」
「…………んなもん、甘ったれてねえで全部見ちまえばいい話だろ。俺が今更こいつに変な距離を保とうとしたりなんかするもんかよ…そういう事なら話は早ぇ、今回ばかりは感謝する」
