第10章 名前を呼んで
首領の執務室を出てから、立原と一緒に中也さんの執務室へ向かう。
芥川さんもついてきたそうに来ていたのだけれど、他にも首領から話があるとかなんとかでついてこれず、心なしか少し拗ねているようにも見えた。
「しっかしお前、あの芥川が甘やかすとか普通ねえだろ。ふげえよなマジで」
『芥川さんは最初そこまで仲良くなかったよ。なんか途中から一気に態度豹変してすっごい甘やかすようになっちゃったけど』
「そ、想像つかねぇ…ああ、ここだな。んじゃ俺はとりあえずジイさんと銀のとこ行ってくっから、また何かあったら呼べ」
大概立原も私のこと甘やかしてるんだけどなぁ。
本人に言ったらどんな反応されるんだろうなんて思いつつもありがとうとお礼を言って、執務室の扉を開ける。
否、開けることだけしか出来なかった。
開けて中の様子を見た途端に私と立原の表情がピシッと固まる。
それはあちらも同じだったようで、ソラさん以外の全員がフリーズしていた。
「!あら、さっきの」
「…………蝶、待て、誤解だ。大いなる誤解がある」
『……えっと?ソラさんが中也さんの執務室にいて?…なにがどうしてソファーなんかに押し倒されてるんですか馬鹿中也さん』
私の声に中也さんと立原はヒィッ!?と顔を青くする。
中也さんが普段仮眠用に使うソファーに、無理矢理なのかなんなのか、ソラさんが中也さんを押し倒している光景だった。
「仕事に一旦区切りつけてここでお前が戻ってくんの待ってたらひっつかれかけてただけだっつの!!!」
『…あっそ。うん、立原、またね。バイバイ』
「え、蝶。お前大丈夫なのか!?…ま、またな」
有無を言わせぬ目で見つめてから、中也さんの執務室の扉を閉める。
そしてツカツカと中の方まで歩いていって、許可も何もとらずに執務室のベッドに上がってうつ伏せになって横になった。
『お好きにどうぞ、見てるこっちがもう疲れる』
「!中原幹部、許可が下りました!!盛大な抱擁を…」
「許可が下りるわけねえだろ、いい加減分かれ手前は!!?」
そんなところも素敵…と声を漏らすソラさん。
そうだね、素敵だよこの人は。
無性に物凄くイライラする。
私がここにいる限りは変な動きなんてさせないし、中也さんに怪我させるようなこと絶対しない自信があるからいいのだけれど…驚く程に醜い自分が影を覗かせ続けるのだ。
