第10章 名前を呼んで
「そ、そうそう…蝶ちゃんの事があるから、何かあった時に中原君や紅葉君…芥川君レベルの子を向かわせられるように、秘書を雇ったんだよ」
『!私の…?』
「そう、忙しい仕事があって抜けられないと困るだろう?だから指揮を執る人物が必要だからね」
『…………そう、ですか。首領、“私の事”で少しお話があるのですが』
蝶ちゃんの?と目を少し細める首領。
私の事……この言い回しは限られた人物にしか伝わらない言い回しだ。
少人数で大切な話がある時…極秘のような話がある時に使うフレーズ。
「…そうか、それならもう芥川君と三人の顔合わせも一応済んだことだし、君達三人はそれぞれ持ち場についてくれ」
首領の一声で三人はこの部屋を出て行く。
異様な空気の変わりように立原はついていけていない様子。
「それで蝶ちゃん、話というのは?」
『話……もいいですけど、中也さん。席を外していただいてもいいですか』
「!……は、俺?…なんで俺が………」
『お願いします…首領と芥川さんと、立原にだけ話があるの』
中也さんは流石に私のお願いに何かを感じたのか、分かった、執務室にいると踵を返して歩いていった。
しかし彼が首領の執務室の扉に手をかけた時に、自身の欲と心配が入り混じって声をかけてしまう。
『ち、中也さん……ッ、嫌いになってないからね…っ?』
それにフッと笑ってこちらを振り向いて、中也さんは馬鹿、と続ける。
「心配せずともお前にしか俺は興味ねえよ…じゃ、また後でな」
手をひらりと振っていった中也さんに私も振り返して、少ししてから再び顔を引き締め、首領の方に向き直る。
「さて、中原君に話さないとはかなりのものと判断するが…いったいどういった用件なんだい?」
『……ここには盗聴器も何も今付いていないのでお話します。私が伝えたいのは…あの三人の秘書さん達から、物凄く嫌なにおいがするという事です』
私の発言にピクリと眉を動かす首領。
芥川さんはやはりそうかといった顔で納得し、目を伏せている。
「嫌なにおい?」
『はい、私からしてみると、会議室の中でどうして誰も気にならなかったのか分からなくて気持ち悪くなるくらいに…あの人達はわざとらしい。何も目的なんかは分からないんですけど、下手に幹部に……中也さんにベタベタと触れさせるのに危険を感じています』
「!!それはまた…」
