第10章 名前を呼んで
俺の一言に納得するも、それでもやはり女というものには誰しも甘くなるらしい。
「……チッ、俺は女だからって甘くはしねえからな」
吐き捨てるように言ってから、サバイバルナイフをしまう。
「首領、交代させるなら今の内っすよ、俺今かなりキてるんで、出来ればすぐにでも変えた方がいいとは思うんすけど」
「う、ううん…でも代わりというのもいないしねえ。何より君に秘書をつけるのだって、蝶ちゃんの有事の際にすぐに君が動けるようになんだけど」
「!…そのために?それだったらそ___」
言いかけたところで携帯が震える。
失礼しますと言って首領に了承を得てから画面を確認すると、一件のメールが入っていた。
差出人が蝶だと分かって、目を見開いて食い入るようにそれを見る。
____ごめんなさい
頭冷やしに外出してきます
立原と一緒に出るんで心配しないでください
たった三行の短い淡々とした文。
メールを送ってくれただけでもありがてえ。
しかし立原付きとはいえ外は外だ、それに首領の見解も聞かせてやった方があいつも安心するだろうし、なんとか話をさせなければ。
しかしどうする、わざわざ連絡を寄越すということは、これだけ伝えたからもう探しに来るなと言っているようなものじゃないか。
蝶か立原に悟らせて、変に隠れられんのが一番大変だ。
「中原君、その様子は、蝶ちゃんからかね?」
「!は、はい。立原と外出するから心配するなと…連絡を寄越すあたり、多分相当頭にキてます、あいつ」
「ふむ、どうしたものか…まあこの場の収拾は私がつけておこう。中原君は早く蝶ちゃんを探しに行ってあげたまえ」
「は、はい……ッ、え、今なんて…」
思わず聞き返した。
首領だって分かっているはずだ、蝶がこうなると頑固になるってことくらい。
しかし幸いと言うべきか偶然と言うべきか、あいつは今能力を使わねえようにしてる。
それだけがせめてもの救いだろうか。
「だから、なんとかして蝶ちゃんの元に早く行ってあげなさい。場所など伝えられなくとも、あの子が行きそうな場所は君なら見当がつくだろう?」
「そ、そりゃ何箇所か思い浮かぶところは…でもこれ、どう考えても暫く放っておけって言ってるようなもんですよ?」
言った途端に、首領と姐さんから揃って溜息を吐かれる。
「いいからとっととあの子を探しに行ってやらんか!!」
