第10章 名前を呼んで
「!な、中原君、流石にまだ初対面だったんだ!その辺にしておきなさい!!」
「中也、それ以上すれば蝶が手加減した意味がないじゃろうに…」
首領や姐さんの声は聴こえるが、そんなもんに構っていられるか。
「俺の秘書に立候補したんだってな?言っとくが、俺が部下共に最も言い聞かせる内容はただ一つ……あいつを傷付けねえ事だ。あいつの手を煩わせねえ事だ」
「あ…ッ、く……、」
「他にどんな失敗をしようが、例えポートマフィアを裏切ろうが、庇ってもやれるし一思いにころしてやれる。だがな、あいつに武器でも向けて万が一にでも傷つけようもんなら、俺は人間やめて手前を一生痛めつけて飼い慣らしてやるよ」
サバイバルナイフに血が伝う。
目の前の女の精神もそろそろやられてきたのか、全身を震わせて怯えているようだった。
これくらいが丁度いい、頭のおかしな女にゃこれくらいすんのがよく効く。
俺はそこらの女なんてもんに興味もなけりゃあ慈悲もねえ。
太宰の野郎は俺よりも部下に厳しかっただろうが…そんなあいつよりも、蝶に武器を向けるような輩がいれば、俺は冷酷になんて容易くなれる。
今こそ本当に、人間なんて皮を破り捨ててこいつをこの場で斬り捨ててやってもいいくれえだ。
「な、中原殿…ソラが無礼を働いて申し訳ありませんでした、ですからせめてもう一度チャンスを……」
「……手前、リクとかいったか。生憎今の俺は正気じゃいられなくなってきたみてえで、虫唾が走って仕方ねえんだ…手前の謝罪もいらなければ、俺に対する謝罪なんてもんいらねえんだよ」
「!!…す、みません」
大人しくなるそいつに舌打ちしてから、サバイバルナイフを喉元からツプリと抜き、伝っていた血液を振り払う。
ソラとかいう秘書はまだ恐怖心が拭えねえらしく、ガタガタと目を見開いて固まっていた。
「な、中原君?…その、流石にやりすぎなんじゃあ……」
「首領、何を仰るんですか?普通に考えてみても下さいよ、突然幹部格の人間にひっつきに来た挙句、“在籍上の特別幹部”に武器まで向けたんすよ。こいつが新人であれ何であれ、普通はその場で処刑するのもありでしょう」
ビクリと肩を揺らす新人三人とA。
「し、しかし流石に、女子を相手にいきなりそれは…」
「姐さんまで……いつからここは女に甘ぇ組織になったんだよ、蝶とはわけが全然違ぇんだぞ」
