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第10章 名前を呼んで


『ねえ、本当に大丈夫?本当の本当に引き受けてよかったの?』

自分の仕事を片付けると、首領から呼び出しがあって、立原が探偵社のビルのところまで車で迎えにやって来た。
そこにお邪魔してポートマフィアの拠点まで乗せていってもらい、到着してから、指定された会議室に立原と歩いていく。

「だからいいっつってんだろうが、いい加減それやめなかったら幹部の執務室に縛り付けんぞ」

『だ、だって立原の時間が…』

「……俺の時間を使ってお前が無事でいれんなら、それに越した事はねえよ」

ほら、しょげてねえでとっとと行くぞ、と先に進む立原の後をついていく。
すると会議室の入口で、バッタリと見知らぬ男の人と遭遇した。

立原が頭を下げているあたり、立場が上の方の人…とりあえず私も会釈だけすると、ニコリと笑って返される。

カジノのディーラー、もしくはそこの経営者のようなきらびやかな装いの男の人。
第一印象はお金に執着が強そうなのと…

「どうも、お初にお目にかかります、特別幹部の白石蝶さん。私は五大幹部の一人、“A”と申します。かねてからの噂通り、美しい方だ…」

貼り付けた表情が胡散臭い。
鷹岡の時のような嫌なものを感じるわけではないのだけれど、気持ち悪さはあれ以上だ。

『……私は今は探偵社の人間です。“そういうの”はいいですから、早く中に入りません?』

彼もここにいるということは、首領に呼ばれたのであろう。
会議室の扉を開けようとすると立原が私の前に出て、待て、と扉を開けてくれた。

そんなに徹底せずとも、扉の開閉なんて護衛任務には含まれてないのに。

『プッ、立原のくせに律儀なのね』

「うるせえ、とっとと中に入れ…待っててやっから」

『うん、ありがとう』

立原に微笑みかけてから、まだ特別幹部だとか私が女だからとかを気にしているのか入る様子のないAさんの前を通り過ぎて、一礼してから先にお邪魔させていただいた。

中に入ると首領、紅葉さん、そして中也さんの三人が揃って座っている。

「蝶!やっと来たかえ!!会いたかった…!」

『!!こ、紅葉さ…ッ、いきなりは苦し……っ』

私を見た途端に目の色を変えて私を抱きしめに来た紅葉さん。
う、腕の力が強すぎて窒息しそう…

「…紅葉君、蝶ちゃんにそうしていると非常に気分を害する子がいるから、そろそろ離してあげてくれないかね」
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