第10章 名前を呼んで
ご飯を食べて身支度を整え、探偵社の事務所まで中也さんに送っていってもらった。
私の分のお弁当まで作ってくれちゃってるし……何よりやっぱりご飯美味しかったし。
小さい頃に抱いていたもやもやをまた感じながらも、怪我した自分が悪いんだと言い聞かせて出社する。
夏休みで訓練のない日、久しぶりの定時での出社。
『おはようございま〜す…?』
ガチャリとドアを開けて中に入ると、全員が目を丸くして私の方に目を向ける。
太宰さんただ一人が楽しそうに蝶ちゃん!!と騒ぎ始めている。
「おはよう蝶ちゃん!!今日もいい自殺日和だね、心中『しません』そんな君が大好きさああ!!!」
『もー、本当に懲りないですよね太宰さん………って皆さん驚きすぎじゃありません?流石に夏休みくらい、私だって仕事しに来ますって』
「お、おおおはよう蝶ちゃん…具合はどうだい」
なぜか顔を青くする谷崎さんの問いに、元気ですよ?と返す。
するとこれまた何故か、死にそうな顔をしながら国木田さんが私の前に現れて、ガシ、と両肩を掴んだ。
「し、白石……お、お前…」
『は、はい?…ってどうしたんですか国木田さん、すっごい顔してますよ。それこそ具合が「白石」は、はい…ッ?』
「…………俺の事は、嫌いじゃないか」
突然の国木田さんの重々しい一言にえっと間抜けな声が出る。
『私がなんで国木田さんの事を嫌いになるんです…?』
「!!う、うおおおおお…っ!!!白石!!白石が帰ってきた……!!」
すぐさま号泣し始める国木田さん。
流石に不審に思って周りに目を向けると、引き攣り笑いで谷崎さんが口を開く。
「ち、蝶ちゃん?昨日の記憶、ある?」
『昨日って、探偵社で歓迎会…?…………ぁ』
そこで、どうして皆が私を凝視していたのかを悟った。
そうだ、ここでお酒を飲まされたんじゃないか。
それで気が付いたら中也さんとあんな事になっててそれからあれがああなってそうなって…
『………わ、私何か変な事してました…?』
「記憶は無いんだね……うん、大丈夫だよ。ちょっと何人かがいい思いしてちょっと国木田さんのガラスのハートが傷ついたくらい」
『いや、本当に何が…ていうか与謝野先生、だから私お酒はって遠慮してたのにっ』
「い、いやあ、流石に妾も酔っててねぇ。以後絶対飲ませないよう肝に銘じとく」
マジで、何があった。
