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第10章 名前を呼んで


『ん~……はれ、っ?』

寝ぼけた頭を覚醒させる。
違和感、何故だろう。
妙に寝ている所が広い。

ムクリと身体を起こして、手を顔に当てて、昨日の晩に何があったのかを思い出した。

『…~~~っ!!!』

ダラダラと冷や汗が流れ始め、声にならない声をあげて顔をブワッと熱くする。
シャツのボタンは止められていて、下もちゃんと下着を履かされている。
間違いない、中也さんが着せたんだ。
あの人が整え直したんだ。

しかしそこまで思い出してから、当の本人が隣に寝ていないのにようやく気が付く。
どこに行ったのかと焦り始めた頃に、カチャ、という音がリビングから響いてきた。

そして鼻を掠めるいい匂い…まさか、あの人に朝ご飯を作らせてしまったのだろうか。

『……ッ、て、ぇッ!?きゃッッ!!!?』

「!蝶!!?」

慌ててリビングの方に移動しようとベッドに座り込んでいたのを立ち上がろうとすれば、何故かシャツの裾を思いっきり足で踏んでしまい、ベッドの上から床に思いっきり転げ落ちた。

顔をそのまま打ったらしく、鼻とおでこがとてつもなく痛い。
暫くプルプルと震えながらも涙目に抑えて、意地で泣くのを堪えた。

中也さんはすぐにこっちに駆け寄ってきたのだけれど、情けない私の姿にフリーズして固まっている。

『ぃ、ッたぁ……ッな、なんで裾なんて踏んで…ぁ、れ?』

鼻を押さえながら座り直すと、ようやく転んだ理由が判明した。
腰元よりも更に下まで伸びた裾、腕を伸ばしたことによってようやく分かった長い袖…何よりも、私の体型には合わなさすぎる肩幅とサイズ。

『…………ッ!?え、っ…もしかしてこれ中也さんの……っ』

バッと顔を向けると中也さんは立っていて、私に着せられているのと同じようなデザインのシャツを着ていた。

「ん…?あ、ああ、お前また気絶しちまったけど服結構濡れてたから……ってそうじゃねえ、大丈夫かよ!?顔以外にもどっか打ったか!?」

すぐさま私のところにしゃがみ込んできて顔を覗き込む中也さんに心臓が跳ねて、昨日の事も相まってとんでもなく恥ずかしくなる。

『あ…ッ、な、なななんにも!!?なんにもなくって…ッんぅ…』

目をそらした瞬間に、散々昨日もしたキスをされた。
ゆっくりと離されて口をパクパクさせて中也さんを見ると、彼はまたずるい笑顔を向ける。

「…はよ、蝶」
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