第8章 お正月 <双子6歳>
「少し散歩しようか?」
雅紀がしんみりした空気を温めるように明るい声で言う。
「うん!」
智も和也も元気に返事をしてそれぞれ大人達と手をつないだ。
川沿いをゆっくり歩きながら過ごす時間はしごく穏やかなものだった。
地図を見ないでなんとなく歩く。
「ねーねー、あれなに?」
川沿いを離れ、緩やかな坂道を上っていくと大きな建物が見えてきた。
「なんだろう?」
和也の声に周囲をみると看板があった。
「あぁ…大学みたいだよ?」
そのまま歩いていくとまた別の建物が見える。
ここについている看板には「Hospital」の文字。
「へーここなんだぁ」
雅紀がぼそっと言うのを智は聞き逃さなかった。
「まーくん知ってるの?」
「うん、まーくんの大学病院とね、一緒にお勉強している病院の一つなんだ。
そっかぁだから、翔兄がウィンチェスターって言った時になんとなく聞いた覚えがあったんだ」
雅紀はようやく得心したといった顔で智に答える。
そのまましばらく歩いて、子ども達に疲れが見え始めたのでタクシーを拾って街の中心部に戻った。
小さな喫茶店に入ってお茶をしながら休憩しているうちに、うつらうつらしはじめた智。
和也は途中の本屋で買った塗り絵を楽しんでいる。
眠そうな智を抱き上げ、寝かしつける潤。
そうこうするうちに雅紀のもとに翔から連絡が入り、そんなに立たないうちに翔と斗真が姿を見せた。
こうして、何時間かぶりに6人が揃った。