第8章 お正月 <双子6歳>
すごくのどかな街という印象のウィンチェスターは昔、アングロサクソン王国時代に首都だった都市だという。
煉瓦や石造りの建造物も多い。
大学もあるらしく、学生の姿もちらほら見える。
坂道を下っていくと少し開けたところに大きな建物が見えてきた。
「潤くん、あれなに?」
突然見えた大きな建物に和也が興味深げに聞く。
「ウィンチェスター大聖堂だって。
見学も出来るみたいだけど入ってみる?」
「え?入れるの?」
「うん、入れるよ?確か円卓あったよね?」
雅紀がガイドブックを持つ潤に声を掛ける。
「いや、それはグレートホールだって。
こっちはねウィンチェスター聖書っていう彩色聖書があるんだって。
すごく綺麗らしいよ?」
潤がガイドブックを見ながら応える。
「ねー入ろう?」
智も興味深げに中をのぞいている。
「じゃぁ時間もあるし入ってみるか?ね、潤ちゃん?」
「だから潤ちゃんはやめろよ。まぁいいや、入るぞ、智、和」
二人は潤と雅紀とそれぞれ手をつなぐと、薄暗い建物の中に入っていく。
入口で潤が入場料を払うと日本語パンフレットが手渡され、中に通された。
「ここの建物は11世紀から16世紀ぐらいまで掛かって完成したんだって」
雅紀はパンフレットにざっと目を通して二人に離す。
「それって長いの?」
智がよくわかんないって顔で雅紀に聞く。
「うんとねー500年ぐらいかな」
雅紀の答えに双子は息を飲んだ。