第45章 ・聖夜、光の中で
そうやってしばらく義兄妹はショッピングモール内で過ごしていた。
「これはくまのぬいぐるみか。」
「そうですね。着せ替えが出来るようです。」
「そうか。これは。」
「人気のゲームのキャラです。昔から長くシリーズが続いているとか。クリスマス仕様ですね、帽子が可愛いです。」
「そうか。ところでこれは兎なのか。」
「放電する鼠です、兄様。」
「そうか。」
こんなやり取りもあった。
「あら、綺麗。」
「化粧は必要ない。」
「せめて見るだけでも。」
「いいだろう。」
「あ、この色素敵。」
「これは口紅か。」
「はい。」
「随分種類があるものだ。」
「そうですね。あら、これは文芸部の先輩が持ってた」
「これは。」
「チークです。」
「つまり。」
「頬紅です。」
「そうか。これは。」
「マスカラです。睫毛に塗って濃く見せるものです。」
「一番お前に必要ないものなのはよくわかった。」
そんなどこかボケたやり取りを経て2人はショッピングモールを出た。
ショッピングモールを出た頃には昼食時で、2人はノシノシポテポテと道を歩いていた。若利はやはりコートのポケットからメモを取り出しては確認している。文緒が手を引かれるままにやってきたのはとある店だった。入ってみると義兄妹と同じような年頃の客が結構入っている。入った瞬間、幾人かにちらりと見られた気がするが流石に慣れた。とりあえずは席につく。
「同じような年の人が多いですね。」
「そうだな。」
「人気のお店なんでしょうか。」
「そうらしい。」
「兄様がご存知なのが意外です。」
「たまには。」
「そうですか。」
文緒は深く突っ込まない事にしてメニューに目を通した。
食事の間は特に多くを話さなかった。しかし美味しそうに料理を口に運ぶ文緒を見て若利は内心満足していて白布の情報に感謝だなと考えている。いつかのように近くのテーブルにいた女子達が自分を見て頬を染め、次に文緒の方に目をやってあの子何だろ彼女、まさか親戚とかじゃないのなどと好き勝手言っている事には気がつかない。
「今日は食が進んでいるようだな。」
「結構歩いたからでしょうか、珍しくお腹がすいて。」
「そうか。急ぐ事はない。」
「はい。」