第45章 ・聖夜、光の中で
食事が終わってからは周囲を散策していて、文緒は通りに並ぶ店のウィンドウをちょくちょく眺めては楽しみ、若利はそんな文緒を眺めて楽しんでいた。勿論顔には出ていなかったけど。なるほど連れ出したのは正解だったと思う。さてそうこうしているうちに辺りが暗くなり始める。若利はそろそろかと文緒の手を引いた。
「次はこっちに行く。」
「はい。」
「気にいるといいのだが。」
「楽しみにしています。」
義妹は微笑み、若利はそうかとだけ呟いた。
ここまでずっと行き先を伏せられたまま若利に連れられてきた文緒、今度は何だろうと思っていたら
「あ。」
思わず声を上げた。クリスマス仕様のイルミネーションが通りを彩っている。
「兄様。」
思わず義兄を見上げると当の義兄はいつもどおり大して表情が変わっていない。
「せっかくの日だ、こういうのがいいかと思った。」
明かりに照らされた義兄の整った顔を見て文緒はドキリとした。ほぼ毎日見ている顔、今更なのにどうしてこんなに心臓が高鳴るのか。
「嬉しいです、兄様。」
文緒はギュウと義兄の手を握る。
「そうか。」
呟く義兄の声もどこか満足そうだった。
「もう少し歩く。」
「はい。」
「冷えていないか。」
「大丈夫です。」
「そうか。」
ノシノシポテポテときらめく光の中を2人は歩く。若利に手を繋がれたまま文緒は辺りを見回して景色を楽しむ。
「使い古された言い方ですが幻想的ですね。」
「ああ。」
「あら、あそこは色が入れ替わってますよ。」
「ああ。」
「兄様、ちょっとだけお待ちください。」
「どうした。」
「写真に撮りたいです。」
「そうか。2人で撮るか。」
「はい。でも先に景色から撮りたいです。」
「そうか。」
一旦兄妹は邪魔にならない所へ移動する。
「ええと、このスマホはカメラがこれで。」
まだ完全に馴染んではいないスマホを操作して文緒は何とか景色を撮ってみた。が、
「ブレてしまいました。」
「そうか。」
若利はそれだけ呟く。文緒は慌てて撮り直しを始めるが若利は特に急かすことがない。
「手先は大丈夫か。」
手袋を外してスマホを操作する文緒をむしろ心配していた。