第45章 ・聖夜、光の中で
文緒は正直ドキドキしていた。折しも今日はクリスマス、白鳥沢に編入するまで友人と出かけることすらなかったのにまさかの義兄と外に繰り出している。しかも義兄は行き先は伏せていた。俗に言うサプライズなのか。義兄が時間を割いてくれたというだけでも嬉しいのにどうなるんだろうと思うと落ち着かない。そんな心持でノシノシ歩く義兄に手をひかれてポテポテ歩く文緒の姿は―実年齢より下に見られやすい外見も相まって―傍(はた)からは歳の離れた親戚に連れられているように見え、実際道行く者の幾人かは微笑ましそうに見ていた。
義兄妹はしばらく歩いて電車に乗る。降りるまでの間ほとんど話さなかったが若利は時折コートのポケットからメモを取り出して何やら確認していた。
やがて電車はとある駅で止まり、文緒は若利に手をひかれて電車を降りた。
「まずは大事がなくてよかった。」
改札を出てから若利が呟く。
「大袈裟です、兄様。」
「一度お前に触れた不届き者がいた。特に今は冬休み中だ、用心に越したことはない。」
一度若利と出かけた時に文緒の髪を引っ張ってきた奴が出たことをまだ気にしていたらしい。
「それより人が多いところに行く、手を離すな。」
「はい、兄様。」
ちょっと手が痛い気はしたが自分もはぐれたくはなかったので文緒は素直に返事をした。
「ここだな。」
まず連れて行かれたのはショッピングモールだった。きょとんとしていると若利が逆にどうしたと言いたげに見つめてくる。
「どこでも見たいところに行くといい。一緒に行く。」
ますます文緒は驚くが折角の事であるし休日で人が多い中でっかいのと年齢不詳が突っ立ったままでいるわけにも行かない。あたりをざっと見回すと雑貨屋が目についたのでそこへ行きたいと申し出た。
「そうか。」
若利は頷き、文緒の手を離さないままノシノシと歩きだした。