第45章 ・聖夜、光の中で
つまり文緒からすればまさかの予告だった。
「25日はまだ空いているか。」
その日の夜帰宅した義兄に言われて文緒はきょとんとした。
「はい、空いております。」
「そのまま空けておけ、一緒に出かける。」
「はい、って、え。」
「嫌なのか。」
「とんでもない、嬉しいです。ただびっくりしてしまいました。」
「そうか。」
「因みにどちらへ。」
尋ねると義兄はほんの一瞬黙ってから重々しく言った。
「当日までは伏せておく。」
文緒は目を丸くしたが程なく微笑んだ。
「楽しみにしております。」
驚く事に義兄は珍しく視線をそらし、まるっきり照れたような様子を見せた。
何だかんだで12月25日当日である。
「支度は出来たか。」
「はい、兄様。」
「防寒は大丈夫なようだな。」
「冷えると聞いておりましたから。」
「そうか。それと」
若利はもふもふと着込んでいる義妹の襟巻きをそっとめくり、
現れたボールチェーンをつまもうとする。IDタグのようなあのペンダントを文緒は相変わらず律儀にかけていたのだ。
「これは必要ない。」
言いながら若利は外そうとしてやるのだがもちろん襟巻きをつけたままではうまく行くはずもない。気づいた文緒が一旦襟巻きを外して何とかなった。
「危うく瀬見に叱責されるところだった。」
外したペンダントをコートのポケットに入れながら若利は呟く。
「瀬見さんも大変ですね。」
「何か言ったか。」
「いいえ兄様。」
「そうか。ところで襟巻きが歪んでいる。」
「兄様、少し苦しいです。」
「すまん。」
そんなやりとりを経て義兄妹は家を出た。