第13章 自分らしさと君のぬくもり【十四松】
「!絵菜…?」
「大丈夫、落ち着いて。ゆっくりでいいよ」
あやすように言うと、緊張が解けたのか十四松くんの震えが止まる。そしてすぅっと息を吸い込んで、改めて私に向き直った。
「…絵菜。僕、本当は君をちゃんとデートっぽい場所に連れていこうって思ってたんだ。でもデートってよく分からなくて…結局、君に甘えちゃった。それなのに、君は楽しんでくれた。それがすごく、嬉しかったんだ」
「十四松くん…」
「君と一緒にいると、あったかい気持ちになるんだ。僕、兄弟のことも大好きだけど、みんなといる時とは違う感覚で…この気持ちがなんなのか、よく分からないんだ。だから…
君を、抱き締めてもいい?」
どこか熱の篭った眼差し…こんなに真剣な十四松くんを見るのは初めてだ。
…そう。いつも明るくて前向きでニコニコしてて、純粋でちょっぴり子供っぽいところもあるけれど、彼だって私と同い年の大人の男性なんだ…。
「…うん。いいよ」
彼の想いに応えたい。その一心で、私は彼に向けて両腕を広げる。瞬間、十四松くんは勢いよく私に抱きついてきた。
「きゃ…っ」
体がよろけそうになるのを必死で堪える。ぎゅうっと力強く抱き締められて、私はドキドキしながらも彼の背中に腕を回した。
「…十四松くん…」
小声で彼の名を呼ぶも、返事はない。どんな表情をしているかも見れない。
やがて静かに彼の体が離れていき…顔が見えた時には、もういつもの笑顔だった。
「ありがとー!じゃあ帰ろっか!」
「え?十四松くん、あの」
「僕送ってくから心配しないで!」
すっかり元の十四松くんに戻っている。…まるで、この話はこれでおしまい、とでも言うように。
私はそれ以上何も聞くことができずに、依然高鳴ったままの胸を押さえながら帰路についた―。