第12章 縮まる距離、溢れ出す想い【おそ松】
胸が、高鳴る。
彼の優しさに溺れてしまいそうで…
「…絵菜」
名前を呼ばれる。いつもはちゃん付けだったのに…
私、どうしちゃったんだろう。彼の瞳から、目が離せない。
…また、顔が近付いてくる。あの時と同じように。
きっと、唇に触れることはない。それでも私は、
瞳を、閉じた―。
「……」
「…!」
柔らかな感触。しかしそれは唇にではなく…
…ほ、頬にキスされた!?
「え、あ、お、おそ松くん、あ、あの…っ!」
思わず頬を手で押さえる私。し、心臓が!心臓が暴れてる!か、顔から火が吹き出そうだよ!
「あ、ごめん、唇の方がよかった?」
冗談混じりに笑うおそ松くん。どうしてそんなに余裕そうなの…!
「そ、そそ、そんなわけ…!」
「ごめんごめん、だって絵菜の反応可愛いからさ〜。…さすがにさっきの顔は反則だよ?」
「え?さ、さっきのって…」
「あ、無自覚?まそれもそれでポイント高いけど。ってわけでもーいっかい」
ちゅっ
今度はもう片方の頬にキスされた。
「〜〜〜〜っ!?」
声にならない声を上げ、口をぱくぱくとまるで金魚のように開け閉めをする。
「真っ赤っかだよ〜絵菜?さすがに刺激が強かった?」
ニヤニヤと、心底愉快そうなおそ松くんを見て、沸々と怒りが込み上げてくる。…ぜっったい私のことからかってるんだ!
「お、おそ松くん!いい加減にしないと
「おっと忘れるところだった。はいこれ」
台詞を遮り、おそ松くんはポケットから何かを取り出して私の首にかける。
「…え、これ…ペンダント?」
「そ。今日のお土産な。タオルだけってのはなんか味気ねぇだろ?それ買う時一緒に買ったんだよね」
夕陽を受けてキラキラと輝く、銀色のペンダント。トップにはペンギンがあしらわれていた。
「じゃ、俺そろそろ帰るわ。また遊ぼうなー!」
元気よく手を振りながら去っていくおそ松くんの背中を見送りながら、私はアパートの塀に力なく寄りかかる。
……どうしよう。鼓動、ずっと早いままだ。
顔も熱い。
もらったばかりのペンダントをそっと握りしめながら、私はしばらくその場から動けずにいた。