第10章 衝動【カラ松、チョロ松】
中はわりと綺麗な内装。こんなところが本当に仮住まい?
「…ここ、誰の家なの?」
別に聞かなくてもいいこととは分かっていたけれど、もしかしたら何か情報が得られるかもしれない。幸いにもまだスマホは無事だ。
「だから俺んちだって。まぁ正確には俺の兄貴の家だけど、似たようなもんだろ。今日は¨彼女¨が来るからって言って家を空けてもらってんだよ」
お兄さん…ああ、そういえば都会にいるとか言ってたっけ。どうりで自由に振る舞えてるわけだ。
リビングに着くと、いきなり背後から抱き締められる。私は酷く嫌悪感を抱き、体を捻らせて彼を突き飛ばした。
「…うっわぁ、いつからそんな暴れ馬になっちゃったの?絵菜。突き飛ばさなくてもいいじゃん」
「触らないでって言ったでしょ…!用件はなんなの?!」
「用件?用件…ねぇ。
ヨリを戻したいなぁって」
「っ…!」
こいつ…何も変わってない。
理由なんて決まってる。こいつはただ、楽をしたいだけ。
「何を言われようと、私は二度とあんたと関わる気はない!いい加減お父さんにすがるのはやめて!」
「あー、残念だけどそこはこれから交渉なんだよね。だいぶ怒らせちゃったし、まずは俺たちの順調交際っぷりをアピールしないとと思ってさ」
「だからもうその話は…っきゃあっ!」
いきなり肩を押されてバランスを崩し、後ろにあったソファの上に倒れ込む。急いで起き上がろうとしたけれど、その間もなくあいつが私の上に覆い被さってきた。
…またフラッシュバックする。嫌な思い出が。トラウマが。
ただ押し倒されただけなのに、生理的な涙が溢れて止まらない。
「あーあ、泣いちゃった。…ま、そのまま大人しくしてなよ。どうせ俺には敵うわけないって、今から教えてやるからさ」
嫌だ…嫌だ。
抵抗しなきゃ…このままじゃ…!
―その時だった。
ガァンッ!!
突然、何かが倒れたような大きな音が響き渡る。
「っなんだ!?」
それから、足音。ドタドタと慌ただしく廊下を走ってくる音が聞こえ、リビングの扉が開け放たれた。
「絵菜!」
「絵菜ちゃん!」
「…え…っ」
現れたのは、私が助けを求めた人たち…
カラ松くんとチョロ松くんだった。