第10章 衝動【カラ松、チョロ松】
……揺れている。…機械の音?これは…車のエンジン?
瞼が開かれ、見えてくる景色。車内だ。恐らく後部座席。どこかを走っている。そして運転しているのは…
「!」
頭が一気に覚醒する。少しだるい体を無理やり起こし、運転席にいる男を見て愕然とした。
「あ、目覚めた?もう少しで着くから大人しくしててよ」
「な…何して…!どこに行くつもり!?」
「俺んち。つっても仮住まいだけどな。お前のためにわざわざ短期滞在してやってんだよ。感謝してほしいくらいだねぇ」
「っ!!」
再び頭に血が上る。…けど、そもそもこうなったのは私自身の不注意だ。あの時もう少し冷静になれていれば、こいつに背中を向けるなんてことはしなかったはず。
気を抜かないように…そう自分に言い聞かせていたはずなのに。
『何かあったら知らせて。すぐ助けに行くから』
…鞄はある。そっと中を確認すると、スマホは入ったままだった。
……頼ってもいいのかな。詳しい事情を教えてないのに、都合が悪くなったら助けてだなんて、おこがましいにも程がある。
…でも…
『もしそいつがちょっかい出してくるようなことがあったら、俺を頼ってくれていいから』
…これは甘えじゃない。いつまでも一人で抱え込んでいたら、前に進めない。
トド松くん、おそ松くん…ううん、カラ松くんもチョロ松くんも、一松くんに十四松くん。みんな、私が信頼している大切な人たち。
誰か、気付いて…!