第10章 衝動【カラ松、チョロ松】
【カラ松side】
チョロ松と周辺を警戒しながら、街中を歩く。
…正直な話、こうした見回りに果たしてどれほどの意味があるのだろうか?
おそ松の案を否定したいわけじゃない。トド松の気遣いを無駄にしたいわけじゃない。だが、素性も分からない男を見つけるのは至難の業だし、その男の目的が必ずしも絵菜を傷付けることとは限らない。
もしかしたら、男もたまたま虫の居所が悪くて無理やり連れ出そうとしただけなのかもしれないし…
情報が足りなすぎる。いずれにせよ彼女には内緒で動く以上、男さえ見つかれば捕まえて事情を聞くしかないわけだが。
それもできれば穏便に済ませたいところだ。後日おそ松に聞いた話だと、彼女にとっては元恋人。元だろうが、今は大嫌いだろうが、やはり無闇に手出しはできない。
…しかし…恋人、か。
「…ラ松、カラ松ー」
「!」
数メートル先でチョロ松が止まって俺を呼んでいる。しまった、考え事をしながらだったために歩みが遅くなっていたらしい。
急いで駆け出そうとすると、横道から歩いてきた男性とぶつかりそうになる。
「あ…っ、すみません」
なんとか踏みとどまったおかげでぶつからずに済んだが、
「……」
その男性は少し不機嫌そうに俺を一瞥した後、そのまま歩き去っていった。
ぶつかってはいないはずだが…なんだか目付きの鋭い男だったな。
…ん?いや、あれは…
「カラ松、何やってんの。いちゃもんでもつけられた?」
いつまでも来ない俺に痺れを切らしたのか、チョロ松がやってきて怪訝そうに俺を見る。
「…いや、似顔絵に雰囲気が似ていると思ってな」
「今の人?ごめん、よく見てなかった。似顔絵も十四松に預けたままだし」
これがトド松なら、もしかしたらピンときたのかもしれない。似顔絵もあくまで大まかなイメージでしかないから、断定はできないが…
あの時、俺は睨まれた気がする。ぶつかりそうになったからではなく、もっと別の理由…
一瞬ではあったが、あの男の瞳の奥に、憎悪のような暗い何かが見えたんだ。
…考えすぎだろうか。でも直感は信じた方が事態が好転する可能性が高いと聞く。
「…チョロ松。あの男の後をつけてみるぞ」