第10章 衝動【カラ松、チョロ松】
俺は予定していたコースを一周し、約一時間後に家に帰ってきた。
「ただいま…」
9時を回っているが、この時間はほとんど誰も起きていない。父さんはもう仕事に行っているし、台所に母さんがいるくらいだ。たまにチョロ松がライブのために起きてくることもあるが、今日は違うはず。
洗面所で絆創膏に気を付けながら顔と手を洗い、居間に入ると、意外な先客がいた。
「一松、こんな時間に起きているなんて珍しいな」
パジャマ姿の一松が、ちゃぶ台でちびちびとお茶を啜っている。まだ若干眠そうだ。
一松はちらりとこちらを一瞥して、無言のまますぐに視線を戻す…と思いきや、そのままじぃっと俺の顔を見つめてくる。
「…それ、どうしたの」
「ん?ああ、この絆創膏のことか?」
「もしかして、昨日猫に引っ掻かれたやつ?」
「まぁな。今さっきランニング中に偶然絵菜に会って、彼女が手当てをしてくれたんだ」
「え…っ」
?一松がなぜか固まってしまったな。正直に事実だけを述べたつもりだったんだが、何かまずかったのだろうか?
「い、一松?どうし…」
「殺す」
「え、なんで!?」
***
「ああ、それで機嫌悪かったんだね一松。朝食中ずっとカラ松のこと睨んでるから何事かと思ったよ」
午前11時。今日の見回り担当である俺とチョロ松は、連れ立って散歩に出掛けていた。
歩きながら、先ほど一松に殺されかけたことを話すと、チョロ松は納得したように頷き笑う。
「いや、笑い事じゃないぞチョロ松…あの時の一松は完全に殺る気だった。母さんが止めてくれなかったらどうなっていたか…」
「そもそも、なんで本当のことを言っちゃうのさ。適当に取り繕えばよかったのに」
「うぐ!やはり俺の選択が間違っていたんだな…」
「ま、とりあえず気持ち切り替えなよ。絵菜ちゃん、友達と会うなら今日は大丈夫だと思うけど、用心するに越したことはないからね」
「ああ、分かっている」
例えこの先何があろうとも、彼女のことは俺が守ってみせる…!