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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


「っ」

信玄の顔を見れば、その顔には怒りの色が見られるのだ

「なんのお話・・」
「此処」

とんとんと、自分の胸を親指で差す信玄

「お前だろ。ここ数ヶ月、不調になったと思えば直ぐに調子を取り戻す」

今まで信玄は自分の体調のことなど言わなかった
聞いてもはぐらかされる
だからこの言葉に湖はごまかしの表情ができなかった

「しら、ない…」
「「黒くない、大丈夫」「いつもより薄くなった」…何の話だ」

湯船で抱えられた状態の湖には、顔を背けることも逃げることも許されない

(起きてた…?)

どくんと、音を立てる心音も
信玄には伝わっているんだろう

「…そんな不調をきたしていると知っていたなら、もっと早く言った…」
「ちがうっ…」
「なにがだ。今だって、足の痛み…我慢できないくらい痛んだろう」

怒ってる
間違いなく信玄の声色からもそれはうかがえた

「ちがっ、ちがうの!ととさま、ちがう!これは、本当に違うの!」
「…湖」

ぽろぽろと落ちる涙
湯船に落ちるたびに、ぽたんと水音を立てた

「本当に…違うの…」
(だから、怒らないで…)

「湖、ちゃんと話せ」
「……」

ちゃんと目を見ようとしない湖に、信玄がため息をつく

「…なら、父親役は下ろさせて貰う。お前の側には居られない」

(…側にいられない……っやだ、)

「本気だぞ…」

少し怒りの含んだ真剣な眼差し
潤んだ視界でも解る

「やだ…」
(だめ…)

「…本気だといった」
(俺のせいで、この娘に支障をきたすなら離れないといけない)

信玄は、此処から去ると城下の宿か…など考えていれば、

(ととさま、まで…)

「…いで…」
「湖?」

「おい、てか…なぃ…で」
(やだ、やだ、やだ…っ二人とも…)

湖の言葉が思い出させる
今朝の一件で、自分の頭がどれ程回っていなかったのかを

(っ、俺は…)

自己犠牲で自分の病を治してる
そう思い当たって、冷静になれなかった信玄がいた

「おねっ、がい…私、…置いて、っかないで…どこにも、いかないでっ」

(…こどもに、追い討ちをかける真似を)

「きら、い、で…いい…」

(…しまった)

「ととさまじゃ、なくても、いいっ…」

(俺は…)
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