第126章 相手の心を開きたいなら、まずは自分の心を開け。
ドックン。
ドクン、ドクン…
話そうとした事で、過去の情景が走馬灯のように蘇る。
自分を護ってくれる背中、だだっ広い道場に転がる天人の死体、血濡れた刀を携える人影、そして…血に塗れた、葵咲(己)の手…。
葵咲の呼吸は荒く、激しくなった。
葵咲「…っ!…ハァッ、ハァッ。」
土方「!」
(土方:過呼吸!?)
軽いパニック状態へと陥る葵咲を、土方は慌てて抱き寄せる。そしてその勢いのまま口付けた。
葵咲「っ!? 土方さ…っ!…んっ!!」
突然のキスで、息を吸うタイミングを逃して息が出来ない。反射的に息を止めた葵咲を、土方はゆっくりと離した。
土方「息を吐く事に集中しろ。」
葵咲「…っ。ハァ、ハァ…っ。」
過呼吸とは、精神的ストレスや不安により呼吸が速く・深くなり、血液中の二酸化炭素が減ってアルカリ性に傾くことで、息苦しさ、手足のしびれ、目眩を伴う発作のこと。今の葵咲は手足のしびれや目眩まではなかったが、そうなってもおかしくない状況だった。土方は葵咲を優しく抱き止め、背中を擦る。
土方「…落ち着いたか?」
葵咲「うん…、ありがとう。」
強がり等ではなく、本当に落ち着いた様子だ。それを確認した土方もホッとして葵咲をぎゅっと抱き締める。
土方「無理に言わなくていい。そこまでして言わなきゃなんねぇことなんかねぇから。」
葵咲「・・・・うん。」
聞かなくて良くなった今の状況にホッとしている土方(自分)がいる。これは果たして本当に葵咲の為を思っての事なのか、土方(己)の保身の為なのか…。
そんな事を考えながらも、土方が葵咲をその腕から解放しようとすると、葵咲はそれを引き留めるようにぎゅっと腕に力を入れた。
土方「葵咲?」
土方からの呼び掛けでハッとなる葵咲。
本音を言えば、今日は帰りたくない。
もっと一緒にいたい。
けれど・・・・。