My important place【D.Gray-man】
第37章 6/6Birthday(番外編)
✣
二度目にその口から聞いた、親のこと。
それを口にする雪は、前に俺に伝えにきた時と同じ。
"思い出す"という顔はしていなかった。
思い起こすよりも思いを馳せるような顔で口にする。
会った記憶がそうないってことは事実らしい。
…前にトマと話した時に、薄らと疑問に思ったこと。
使徒の実験を受けて尚、教団で生き続ける雪がそこまで此処に拘る理由はなんなのか。
俺にとっての"あの人"のように、何か目的があるのか。
……それが恐らく"親"の存在なんだろう。
こいつを一人で立たせ続けているもの。
「……」
…ただ…こいつの親はもうこの世にはいない。
使徒の実験を経験してる時点で、血縁者は死んでることになる。
親の死後に教団に入団したのか。
つまるところ──…亡くなった者に縋り続けてる。
それはどこか腑に落ちない気にさせたが、俺も似たようなもんかと否定はできなかった。
縋り付きたくて縋ってる訳じゃねぇが、俺もアルマへの思いに捕われたままだ。
…だからあの陳腐なAKUMAの幻覚は、アルマの姿なんて作り出したんだろう。
『もう…置いて、かないで』
何もない宙に向かって朧気に手を伸ばす雪の姿。
縋るようにその口から零れ落ちたのは、ゾンビ事件でも一度だけ聞いたことがある言葉だった。
…雪がその生にさえ、執着していなかった理由がわかった。
この世にいない者しか欲していないから、この世の者には興味を持っていない。
それだけ抱えている思いは強い。
自己主張はあまりしない奴だが、雪の意志の強さは知ってる。
だからこそ一人で今までそうやって、抱えて生きてこれたんだろう。