My important place【D.Gray-man】
第37章 6/6Birthday(番外編)
ユウの行動も気にはなったけど、目の前の光景は不思議と意識を惹き付けた。
誘われるようにもう一度、目を向ける。
霧のような雨は優しく頬を打って、その中で見える淡い虹と茜色の悠々と聳える山々は目を惹き付けて離さない。
世界遺産の価値なんてわからないけど…こんな景色を後世に残し続けたいって気持ちは、なんとなくわかる気がした。
悠然とした大きなものを前にして感じたのは、自分という存在の小ささ。
…さっきまで落ち込んでいた気分が、少しだけ浮上する。
「なんだろ…こういうものってずっと見ていたくなるものなんだね」
「……」
自然と口元に浮かぶ笑み。
隣に立つユウから返答はなかったけど、急かすようなことも何も言われなかった。
その目はきっと私と同じに、目の前の景色を見てる。
それだけで充分だった。
それだけで、少し嬉しくなれたから。
…にしても、ユウとの墓地での任務で同じに夕日は見たけど…場所が違うだけで、こうも感じ方は変わるんだなぁ…凄い。
やっぱりあのAKUMAの作り出した雲の中では、結構な時間彷徨ってたんだ。
辺りはすっかり茜色だし。
もうそろそろ陽も落ちて──
「あ!」
「あ?」
はっとして声を上げる。
怪訝に見てくるユウの視線も構わず、慌てて時計を確かめれば──…げっ
今日の残り時間、もう5時間しかない!
「ユウっ! 急いで帰ろう!」
「は?ってオイ!」
「早く戻らないと…!」
ユウの誕生日も残り5時間。
流石にこんな何もない状態で、おめでとうなんて言えない。
慌てて駆け足で吊り橋を戻れば、後ろから駆けてくる気配がした。
「急に走んな! 濡れて滑るぞ!」
「わ…!」
そのまま強い力で背中の服を掴まれて、強制的に止められる。
「また橋から落ちそうになったら殴るつっただろ!」
「でも…!」
このマチュピチュ遺跡から下りて方舟ゲートのあるクスコまでは、列車で数時間かかる。
それから方舟で教団に帰っても…駄目だ、ケークサレを作る時間はほとんど残ってない。