My important place【D.Gray-man】
第37章 6/6Birthday(番外編)
✣
微かな笑い声がした。
知っているようで、知らない声。
だけど。
「…なん、で…」
今、私の目の前に立っている人達。
その二人のことは…知っている。
──…雪
──ああ、雪…大きくなったわね
"雪"
微かに聞こえた、私を呼ぶ声。
どこか聞いたことのある声だと悟ると同時に、ユウの団服から手は離れていた。
前後左右、全ては白い雲の中。
ただ目の前に立つ二人だけは、はっきりと目で確認することができた。
──今まで一人きりにさせてごめんなさい
──沢山頑張ったんだな
優しい笑みを口元に称えて、愛情を込めた目を向けてくる。
私が欲しかった言葉を口にして。
「…っ」
…違う、これは現実じゃない。
だって二人はもうこの世にはいない。
二人がどんな声だったかも朧気で、どんな話し方をするのかも知らない。
私がずっと会いたかった人達は…もう手の届かない所にいるから。
わかってる。
そんなこと、わかりきってるのに。
──顔を近くでよく見せて
──おいで、さぁ
迎え入れるように、広げられる腕。
──おいで、雪
それはずっと私が焦がれていた光景だった。
迎えに来てと、ずっとずっと願い続けて。
ずっとずっと切望していたもの。
「っ…おと…さ…」
わかってる。
これは現実じゃない。
きっと幻。
それでも。
「お母…さん、」
手を伸ばさずにはいられなかった。
だってずっとずっと待ってたの。
ずっとずっと焦がれてた。
良い子にしてたんだよ。
二人の名前も顔も、片時も忘れてない。
あの実験だって我慢して耐えきった。
私が欲した、唯一のもの。
これはきっと幻。
…でも、もしかしたら。
怪奇現象の起きてるこの場でなら。
教団で彷徨っていた咎落ちの霊の子のように、この二人もまた…亡き私の両親の魂かもしれない。
そう思うと、足は自然と動いていた。
「もう…置いて、かないで」
踏み出す。
手を伸ばす。
ギシリと揺れる音。
「雪ッ!」
瞬間、グラリと体が揺れた。