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My important place【D.Gray-man】

第23章 2/14Valentine



「…ごめん」

「何が」

「こんな雨の中で捜させて」

「別に。問題ない」


 濡れた黒い上着を脱いで、チャイナ服の襟元を開けて緩めながら神田の目が私に向く。


「でも、風邪でもひいたら」

「んなもん今までひいたことない」

「え、嘘」

「お前とは体の造りが違うんだよ」


 当たり前のように口にするその言葉に、なんとなく納得した。
 あっという間に怪我も完治する体なら、本当に風邪なんかひかないんだろう。


「それより急に目の前から消えるんじゃねぇよ。呼んだだろ」

「え?」


 あ。神田と逸れた時に聞こえたあの呼び声は、空耳じゃなかったんだ。


「ごめんなさい」

「だから謝んな」


 頭を下げれば、鬱陶しそうに返される。


「次は呼んだら、手を伸ばせ」


 手?


「それなら掴まえていられる」


 顔を上げれば、濡れた黒い目が真っ直ぐにこっちを見ていた。
 と思えば、大きな手が緩く私の手首を握る。


「放っといたらどっか消えてくように見えるんだよ。お前」

「どっかって…何処にも行かないよ」


 私が求めるものは、ここにあるから。


「いいから、ちゃんと伸ばしてろ。無駄に心配させんな」


 手首を握る神田の手に僅かに力がこもる。
 無駄にって…それ、心配してくれてたんだ。
 だからこうやって雨の中でも捜し続けてくれて、雨音しかしない世界から私を見つけてくれた。


「…うん」


 騒音のようで静寂のような雨音が降り続くのは変わらない。
 その中で一人きりだと思っていた世界は、二人きりになった。

 隣に神田がいる。
 それだけで、こんなにも安心できる自分がいる。
 雨に濡れていつもよりひやりと冷たい肌なのに、手首に感じるその体温は私の心を温かくする。

 神田にとって譲れない大事なものは何かわからない。
 私にとってそんな譲れないものは、両親の記録だけだったけど…きっとこれもそうなんだろう。

 目の前のこの人の存在も、きっと。
 私には譲れないもの。

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