My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
そういえば似たようなことをジジさんにも昔言われたっけ。
似たようなことだけど…神田の言葉の響きは、なんだかジジさんとは違って聞こえた。
「月城」
不意に名前を呼ばれる。
お皿から顔を上げて、何かと視線で問う。
頬杖ついたまま片手を伸ばしてくる神田に「何」と声に出して問いかければ、長い指先が触れたのは私の口元。
「ソース、付いてる」
くどいくらい味が濃いサラダのソースを、指先が口元で拭う。
AKUMAの血を拭ってくれた時と同じ、優しい仕草。
ただあの時と違うのは、拭き取りながらくすりと神田の口元に微かに浮かんだ笑…うわ。
「ぁ…ありがとう…」
顔が熱くなって俯く。
最近、偶に見せてくれる神田の優しい笑み。
笑顔という程のものじゃなく、本当に一瞬の笑みだけど。
未だに見慣れなくて、つい照れてしまう。
照れ臭さから慌てて口元を拭っていると、なんだか周囲から視線を感じた。
なん…うわあ。
見渡せば、食事を取っていたはずの女性客の視線がちらほら。
え、なんかこっちを見ながら頬を染めている人もいるんですけど…絶対に神田単体に向けられている目だあれは。
流石。もう生粋のアイドルですね。
アイドルってキャラでもないだろうけど。
「…神田って、狡い」
「? 何がだよ」
思わず漏れた本音。
普段は美形という仮面を被った暴君なのに、そういう暴君キャラとは違うようなことをするからだ。
私の心を簡単に揺さぶっていくのは。
乱暴な癖に優しくて、冷たい癖にこういうキャラじゃないことにも付き合ってくれて。
そういえば最近、頭を叩かれることも減った気がする。
「何が狡いんだよ」
「…なんでもない」
頭を掴まれたりすることは、相変わらず多いけど。
「またそうやって言葉呑み込みやがって」
「これはそういうのと違うから」
言うのが、なんか癪だから。
相変わらず叩く時は叩くし。DVされてるのに褒めるなんておかしいでしょ。
まぁDVというより神田のコミュニケーションの一つなんだろうけど。
と、最近は自分に思い込ませるようにしました。