My important place【D.Gray-man】
第21章 地獄のティータイム
「うん、よし」
聖痕が見えていないか確認して、絆創膏を貼った額へと前髪を下ろす。
こうして肌の色と同じ絆創膏を貼っていれば、包帯時に比べて人の目も向かない気がした。
でもこれも、いつまで続けられるか。
怪我の治りが遅いなんて言っても、婦長さん怒りそうだし。
般若のように怖い顔の婦長さんを思い出して、思わずぶるりと体が震える。
怪我を隠してると、婦長さんは凄く怒る。
今のところ医務室に行く用事はないから、バレずに済んでいるけれど。
「……」
婦長さんを思い出しながら、ふと思い浮かんだのはもう一人別の人物。
…神田も、ずっと額に絆創膏なんて貼ってたら怒るかな…。
額に怪我をしたと知るや否や、神田の自室まで強制連行された。
あんなにしつこく怪我の様子を伺ってくることなんてなかったから、驚いたし聖痕がバレたらと凄く焦ったけど…同時に嬉しさもあった。
怪我したことを怒るというより、あれはきっと心配してくれていたから。
『痛いのが嫌ってんなら……優しく、する』
「優しくする」なんて言葉、神田から言われたのは初めてだったから驚いた。
最後の言葉は消え入りそうなくらい小さな声だったから、一瞬空耳かと思ったくらい。
でも私の顔を伺いながらそっと包帯に触れた手は、本当に優しかった。
優しくて、包帯越しに触れている手の甲は然程感触も感じないのに。
じんわりと触れるそこから広がる"何か"は、確かに私の心を温かくさせた。
ほっとした。
神田にそうして触れてもらえているだけで、安心できる自分がいた。
あれを言葉にするとしたら、なんなんだろう。
「普通の怪我だったら素直に喜べたかな…」
あんなふうに神田に心配してもらえるなんて。
でも普通の怪我だったら、あんなに嫌がることもしなかっただろうし。あんなふうに優しく扱ってくれる神田は見られなかったかもしれない。
そう思うとほんの少し、ほんの少しだけ、この怪我をした意味もあるような気がした。
「って駄目駄目」
はっとして頭を横に振る。
だからって、こんな怪我できて良い訳ないけど。
あれこれ考え過ぎる前に、早くシャワー室を出よう。