My important place【D.Gray-man】
第21章 地獄のティータイム
するとその言葉だけで私の意図を理解したのか、間近に見える睫毛の長い大きな目が、ぱちりと瞬いた。
「もう、兄さんったら」
それから、ふわりと嬉しそうに柔らかく微笑む。
うわあ…何この微笑み。何この天使の微笑み。
これは惚れる。ペックさんが夢中になるのもわかる。
だって同性の私でさえも、見惚れるくらいに綺麗で可愛い。
「ありがとう、雪。ごめんなさいペック班長。私、仕事があったので。行かなくちゃ」
「えっ! せめてコーヒーだけでも淹れ」
「コーヒーなら私が淹れてあげますよ」
「え。」
軽い足取りで嬉しそうに研究室を出ていくリナリーに、笑顔で手を振って見送る。
そのままくるりと体を反転させて、ポットを手ににっこり笑ってペックさんに声をかけてあげれば、片手を挙げた姿勢で固まった。
なんですか、私じゃ駄目ですか。
確かにリナリーに比べたら月とスッポンでしょうけど。
リナリー程の美味しいコーヒーも淹れられないかもしれないですけど。
それなりの味のものなら私だって淹れられますよ。
「えーっと…また今度でいいや。僕、溜まってた仕事あるからっ」
なのに下げるタイミングを逃した手をそのままに、体を反転させたペックさんは逃げるように駆け出した。
なんですかそれ、さっきまで散々コーヒー飲みたがってた癖に。
…まぁ、リナリーのもの限定だろうけど。
溜息混じりにポットを給仕セットに戻す。
全く、大の大人の男が未成年の美少女に下心全開なんだから。
「悪いな、雪。助かった」
「いいえ。リーバーさんも大変ですね」
「任務先で命張ってるファインダーに比べれば、これくらいどうってことないさ」
苦笑混じりに応えるリーバーさんの心遣いに、つい笑みが零れる。
こういうところ、リーバーさんは昔から優しい。
「でも本当に風呂には入れよ? ここ、汚れてる」
不意にその指先が私の手首にちょんと触れる。
見れば機械整備の時にでも汚したのか、真っ黒なオイルの汚れが付着していた。
え…もしかして本当に臭かったのかな。
「…了解です」
そう悟ると、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
一応、私も女ですから。
一応、リナリーと同じ生き物ですから。
うん、一応。