My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「うわっ!?」
「キャッ!?」
「なんだっ!?」
「待て!」
するすると人混みの足の間をすり抜けていくニフラーを、どうにか視界から逃さないようにと雪が追う。
他にも逃げ出した魔法動物は数匹いたが、全部は追えない。
せめてこの元凶を捕まえるべきだと、スニーカーで地を蹴り上げた。
動き易い服装の賜物か、ファインダーとして己を鍛えていた賜物か。
人混みの中では追うので精一杯だったが、人に踏まれる恐怖からニフラーも逃げ出したかったのか、路地へと滑り込むと途端に立場は逆転した。
「この…ラビのピアスを返、せっ!」
暗い路地裏の奥。
排水口へと逃げ込もうとしたニフラーに、先手を取ったのは雪だった。
肩に掛けていた荷物を取ると、排水口目掛けて投げ付ける。
逃げ道を塞がれ戸惑うニフラーの足が、ようやく止まった。
「はぁ…っもう、鬼ごっこは、おしまいだから、ね」
「クキュ…」
「そんな可愛い顔しても駄目。ラビのピアス、返して」
首を傾げる二フラーの口元に、咥えていたはずのピアスはない。
恐らく腹の中に隠したのだろう、惚けるニフラーに雪は厳しい目を向けた。
いくら愛嬌ある動物でも、友人の私物を奪えば泥棒だ。
「キュウ…」
「そんな可愛い声で鳴いても駄目。ほら早く。そのお腹のポッケに隠してるんでしょ?」
「キュキュ」
「首を振らない。嘘ばっかり。そして頭が良いな!」
「キュッ」
「あ!」
思わず突っ込みを入れる雪の足の間を、走り抜けようとするニフラー。
間一髪で体を捻り反転すると、地面目掛けてダイブしながら雪の手が小さな後ろ足を掴んだ。
「捕まえた…!」
「キュイ! クク!」
「あっこら暴れない…! 乱暴にはしないからッ」
「キュー!」
「そんな切なそうな悲鳴上げなくても…!」
ガタッ
「「!」」
奮闘する一人と一匹。
その騒ぎに突如舞い込んだのは、路地裏の奥に積み上げられた古い樽の山だった。
ガタガタと揺れるそれに、一人と一匹の動きが止まる。
「な…何?」
樽がひとりでに揺れるはずもない。
普通なら裏に猫や鼠が隠れているのかと思いそうなところ、しかし此処は魔法界。
煉瓦も勝手に動き出す世界なのだ。