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My important place【D.Gray-man】

第49章 つむぎ星に願いを



 ガタガタと鳴り続ける樽に、自然と寄り添う一人と一匹。
 大人しくなったニフラーを抱いたまま、雪は恐る恐る樽へと近付いた。
 もしかしたらペットショップから逃げ出した魔法動物が、隠れているのかもしれない。


「ぉ、おーい…?」


 その可能性があるからこそ見逃せないと、迷った挙句に呼び掛けた。
 するとどうだろうか、ぴたりと樽の揺れが止まったのだ。

 シンとした静寂が逆に身を凍らせる。
 その場に固まったように動かない雪に、痺れを切らしたのか腕の中のニフラーが、キュイと鳴いた。

 途端に、樽の影から"それ"は飛び出した。


「!?」


 咄嗟に構える雪に、衝撃は訪れなかった。
 樽の影から何かが飛び出した。
 それだけはわかったが、それ以外はわからない。


「え、な…何?」


 辺りを見渡せど、それらしい生き物もいない。
 忙しなく顔を動かす雪の視界が、ふっと暗くなる。


(え?)


 異変は真上にあった。
 見上げれば、狭い路地裏の建物に囲まれた、四角く切り取られたような小さな空。
 其処には青空が広がっているはずなのに、青空ではなくなっていた。


「…夜…?」


 其処に広がっていたのは、無数の星が輝く夜空だったのだ。

 しかし先程まで真昼だった。
 急に夜空に変わることなんてあるのか。
 魔法界だからこそ、そんなこともあり得るのかもしれないと、雪は戸惑いつつ夜空を見上げた。


(あれ…これ、何処かで見たことがある)


 じっと暗い路地裏から見上げる、四角く切り取られた星空。
 それは何処か、見覚えがあった。

 切り取られた空は、その空間から覗き見上げていたもの。


(…あ)


 思い出したのは、昔の記憶。
 小母の下で暮らしていた頃の、幼い記憶だ。

 毎日のように、納屋から見上げていた天窓の星空。
 小さなランプ一つしかない暗い部屋からは、綺麗な星がよく見えた。

 綺麗だった。その天窓が好きだった。
 解放されたままの天窓は、隙間風も酷く雨が降れば最悪だったが、それでも毎日見上げていた。





『おとうさん…おかあさん…』





 見上げては祈り続けていたのは、両親のこと。
 いつか迎えに来てくれますようにと、願い続けていた。

 今は儚き夢。

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