My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
賑わうパブの客や店員全てが、魔法界に関わる者達なのだろう。
そうして感心気味に呟く雪を、ラビが店の奥へと促す。
「おや…誰かと思えば」
人の多い通路を通りカウンターの前を過ぎれば、そこから顔を出した男がラビに目を止めた。
「ブックマンJr.! 珍しい顔だ」
「どーも」
「…知り合い?」
「ちっとばかし」
漏れ鍋のマスターらしいその男は、老人とも言える年齢に見えた。
歯の抜けた胡桃のような顔の独特の男と、ラビを交互に雪が見比べる。
どうやら彼らは顔見知りらしい。
「ブックマンの爺さんは一緒じゃないのかい?」
「色々事情があってさ。裏口使ってい?」
「それは構わんが…お嬢さんはJr.のつれかい? やぁ」
「初めまして」
「Jr.が此処に女の子と来るのは初めて見たよ。隅に置けないねぇ」
「あーやめやめそういう絡みは。違ぇーから」
「そうかい?」
「そーさ! ほらっ雪こっちさ!」
「わッ押さないで…っ」
ぐいぐいとラビに背を押され、促されるまま雪が足を進めた先はパブの裏戸口。
マスターに見送られ戸を開けると、其処は小さな裏庭となっていた。
回りは煉瓦に囲まれ、見上げれば青空天井。
酒の樽や食材の入った木箱が並ぶ、簡易的な倉庫のような場所だ。
「一度捕まると長いからなぁ…あのマスター」
「ラビって、魔法界に来たことあったんだね」
「あー…まぁ、少しだけな。ジジイと一緒に、ログの短期観察っつーか」
「へぇ…でも此処、行き止まりだけど? あのマスターから逃げるなら別の道に行った方が…」
「いや、此処でいいさ。道ならある」
小さな行き止まりの空間で、ラビが向き合ったのは煉瓦の壁だった。
一つだけ煉瓦が抜けた穴を見つけると、徐に懐を探り出す。
「えーっと…あ。あったあった」
「?」
やがて取り出したのは、小さな木片のようだった。
丸みを帯びた先端は、意図的に加工された物だとわかる。
小さな穴を開け紐を通し、ぶら下げてある木片。
その木片を摘んで、ラビが充てがったのは穴の周りの煉瓦だった。
順番に円を描くように、コツリコツリと煉瓦の側面に当てていく。
「……」
「……で?」
しかしこれと言って何も起こらない。