My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「へー。ユウでもそんな顔することあるんさなぁ」
「っ! ぐ、」
アルコールを飲み込もうとした瞬間、間近で聞こえた声に喉を詰まらせた。
なんとか咳き込まずには済んだが、思わず口元を押さえる。
考え込み過ぎた所為か、そいつの気配に気付くのが遅れた。
自分の不甲斐なさと突っ込んできた言葉に眉間に力を入れて睨み付けた先は、三つ並んだ椅子で唯一空いていた場所。
「珍しいもん見れたさ♪」
いけしゃあしゃあと笑顔でほざく、馬鹿兎が其処にいた。
頬杖を付いた馴染んだ姿で其処にいるが、何当然の顔して座ってんだ。
許可してねぇぞ。
「やぁ、君も飲み会に参加に来たのかい?」
「この面子に興味はあるけど、今回は別件で。元帥に話があって来たんです」
「うん? 私に?」
「ちょっといいっすか」
俺にちょっかいをかけに来た訳じゃないなら、無闇に関わる気もない。
用無しとばかりに席を立てば、途端に元帥が残念そうな声を上げた。
「あれ、もうお開きにするのかい」
「言いたいことは言えたので」
当初の目的だった雪のことでの礼は、一先ず伝えておいた。
これ以上引き伸ばす理由もない。
「残念だなぁ」
しんみりと呟く元帥に一礼だけして、中庭を後にする。
風に吹かれて微かに届いた二人の声は、蚊が鳴く程に小さい。
馬鹿兎がティエドール元帥と並ぶ姿は珍しいもんだったが、雪のノアの一件であいつも元帥には世話になった身だ。
そこで思うところもあったんだろう。
別に俺には関係ないことだが──
「…で…を…?」
「それが…ゆ…ことで…」
通路に戻る出入口の前で、ぴたりと足が止まる。
微かでも聞き逃さなかった。
その名は。
「だから元帥の力添えがあれば、ジジイも納得す」
「オイ今なんつった馬鹿兎」
「うぉわビビった地獄耳かよっ!?」
踵を返して肩を鷲掴む。
馬鹿兎の反応なんて二の次だった。
聞き間違いじゃない。
今確かに、あいつの名前を口にしただろうが。