My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
数日後。
自分の手元にどうにか手札を揃えて、ようやく見知った彼を捕まえた。
「やっぱり、此処にいた」
「んあ?」
高い天井まで届きそうな、世界各国の様々な文献や資料が並んでいる棚。
その書庫の奥で、一人黙々と歴史を記録しているエクソシスト。
「ラビ」
差し入れの入った紙袋を軽く持ち上げて見せれば、器用に高い梯子の上で文献を読み漁っていた目を止めてくれた。
「──で、どしたんさ。オレになんか頼み事でもあんの?」
「よくわかったね」
「そりゃあな。見返りがなけりゃ、わざわざこんな差し入れしねぇだろ?」
他人に聞かれないように、書庫室の奥で二人。
ジェリーさんに作ってもらったカスタードたい焼きを齧りながら、横でチョコ入りたい焼きをパクつくラビを見る。
「してたよ、偶に。前におにぎり作っていったことあるでしょ」
「あん時は自分の夜食用に作って余ったから、オレにくれたんだろ」
「…よく憶えてるね…」
「忘れられない性質なもんで」
エクソシストの中で、一番早く距離を縮められたのはアレンだけど。
エクソシストの中で、一番早く素でつき合えたのはきっとラビだ。
今でもその関係は変わらず、彼の隣にいると多少の息苦しさもなくなる。
ファインダーだった頃からこうしてよく話していた仲で、ノアだと知った今もそれは微塵も変わっていない。
それが今の私にはどんなに貴重なものか。
ラビの隣は、変わらず息がし易かった。
「んで、なんさ。ユウのこと?」
「…なんでそこでユウ?」
「違ぇの? てっきり…」
そこまで言い掛けた言葉を止めて、ラビの手は新しいたい焼きに伸びた。
てっきりって…私とユウの間に何かあったことは、誰も知らないはず。
リヴァプールの任務に同行していなかったラビは特に。
なのに当然のように見破られているのは、やっぱり彼の観察眼ならではだと思う。
「…わかる?」
「んー…まぁ」
お互いに書庫室の棚に並んで腰掛けて、目線は手元のたい焼きに向けたまま。
ラビの顔は見えないけれど、その声は普段と変わらないままだった。