My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「月城」
「っ」
名前を呼ばれると同時に、腕を強く引かれた。
はっとして顔を上げれば、離れた場所で待機していたはずのトクサが其処にいた。
私を見下ろす目が、薄らと開眼している。
夜目に慣れた視界の中で、トクサの表情はよく見えた。
「…いい加減戻りますよ。もう明朝に近い」
溜息と共に、今度はやんわりと腕を引かれる。
…変な顔を見られてしまったかもしれない。
「…うん」
その変な顔をすぐには切り替えられなくて、俯きがちに腰を上げた。
いつもは早く教団に戻れと急かすのに、腕を引くトクサの歩幅はゆっくりと狭い。
そこに甘えてついて行きながら、ぼんやりと目の前の手に視線が止まった。
リヴァプールでの一件で、ノアによって切断されたトクサの左腕。
今では何事もなかったかのように、そこにある。
……魔法って凄いなぁ…。
「…もう、痛くない?」
「? なんのことですか」
「腕。足もだけど…ノアにやられた箇所」
意識は朧気だったけど、そこだけは強烈に憶えている。
劈くようなトクサの呻きと共に、視界を待った鮮やかな赤。
目の前に転がり落ちた千切れたトクサの腕を見て、私の意識も真っ赤に染まった。
そこから先は、ほとんど記憶は途切れ途切れだ。
なんとなくぼんやりと問えば、振り返ったトクサの顔が…あ、また開眼してる。
普段は瞑ってばかりいる両目だから、トクサの目が開いてる時って気が荒ぶっているか、珍しい感情を伴っている時のような気がする。
ユウと同じで、本心をあまり話さないからなぁ…そういう態度でトクサの変化を見るようになった。
「前と同じに扱えてる?」
「……」
「もう大丈夫?」
「……」
「あの…聞いてるんだけ」
「喧しいッ」
「ぁだッ!」
じっと固まっていたかと思えば、秒で振り下ろされた右手のチョップが頭に刺さった。
ちょっと何するの…っ心配しただけなのに!
「何す…っ」
「口よりさっさと足を動かす。貴女のお陰でまた私の貴重な睡眠時間が削られたじゃないですか」
途端にいつものトクサ発動。
ずるずると引き摺られるようにして裏口に連れて行かれた。