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My important place【D.Gray-man】

第49章 つむぎ星に願いを



 膝に埋めた視界は暗い。
 だからなのか余計に花の匂いが鼻に突く。
 気にならなかったはずなのに、まるで咽返るような花粉の匂いだと思った。
 僅かに視線を上げれば、湖で蕾を空へと向ける蓮の花々が見える。
 夜だから開花していないのに、なんでこんなに匂うんだろう。

 暗い夜空の下だけど、その光景は何処かで見たことがあるようだった。

 幻想的な、非現実的な雰囲気の中で、何か大切なものを見つけた。
 手を伸ばそうとするけれど、何故かいつも届かない。
 声は忘れた名を呼べず、差し出した手は虚しく空を切る。
 哀しくて辛くて、身を引き裂くような痛み。

 …もし、ユウに私とは別の求める女性がいたら…考えただけで、心は同じに引き裂かれる。
 女性に興味を持たないユウだからそんな気配は微塵もないはずなのに、何故かあのノアの言葉が頭にこびり付いて離れない。

 確かにユウにとって、教団は心休まる場所じゃなかったはずだ。
 私も同じイノセンスの同調実験を受けさせられたからわかる。
 私以上に辛い思いをしてきたはずのユウが、私でさえも教団に不信感を抱いていたのに何も感じていないはずがない。

 ユウは強い人だけれど、鉄の心じゃない。
 ちゃんと、血の通った人の心を持っている。
 それを知っているから。

 なら何故ユウは、そんな場所で献身的にエクソシストとして働いているのか。
 私の両親のように、譲れない何かを抱えているからなのかもしれない。
 それは自らの手で殺めたアルマへの罪悪感なのか。

 それとも…教団で捜し求めている誰かが、いるのだとしたら。


「…っ」


 わからない。
 もしかしたら仲間や友や家族かもしれない。
 愛する女性だなんて、そんな確信はないのに。

 なんでこんなに胸が痛むんだろう。
 なんで泣きたくなるんだろう。

 目の前の咽返る蓮の群は、初めてティエドール元帥に連れられた時とは違って見えた。
 …ユウの視界に広がる蓮の幻想も、こんな世界なのかな。
 聞いただけだと綺麗なものに思えたけど、こうして目の前にすると…まるで呪縛のようだ。

 あの人の心は私の下にはない。
 エクソシストとノアは相容れない。

 そんなことわかってる。
 引き裂く痛みを伴うこともわかってる。
 だから容易に聞けないんだ。
 それが事実だと突き付けられたら、私は──…

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