My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「よしよし。偉いねー、よく我慢したね。立派な男の子だ」
「くすん……わんわん…」
「うんうん、此処にいるよ。大丈夫」
「すん…くすん…」
体を揺り籠のように揺らしながらあやしていれば、段々と泣き声は小さくなっていく。
やがて耳を澄ませないと聞こえない程の儚さに変わると、しがみ付いていた男児の体が重みを増した。
力が抜け、雪に体を預けているのだろう。
「…すぅ…」
「……あれ(まさかの寝落ち?)」
肩に頭を預け、いつの間にかくりくりとした瞳は閉じられていた。
まさか寝落ちられるとは思っていなかったが、夜も更けた時刻。
小さな子供は夢へと出掛ける時間だ。
「どうしよ…」
「おい、こんな所で寝んな」
「ん…んん~…っ」
「あっちょっと待って。起こしたらまた泣いちゃう…っ」
泣き喚きエネルギーを消費した所為で、疲れも出たのだろう。
夢へと旅立とうとする男児を阻むかのように、低い声を神田が落とす。
すると意識を揺さぶられた男児の眉間に、忽ち皺が寄った。
また小さな爆破の如く泣き喚かれたら堪らない。
咄嗟に雪は男児を抱いたまま体を揺らすと、あやすように背中を撫でた。
「よーしよし、おやすみー。子守唄歌ってあげるから」
苦し紛れにあやす口から流れ出たのは、一筋のメロディ。
「───"そして坊やは眠りについた"」
それは神田の知らない詩(うた)だった。
「"息衝く灰の中の炎"」
それは雪の知らない詩だった。
「"ひと、つ……」
否、知らなかったはずの詩。
「………」
「? おい、」
子守唄は不自然に途切れた。
自然に歌い出したはずの雪が、言葉を呑み込んだからだ。
(───違う)
幼子を抱いたまま、雪は静かに息を呑んだ。
その目は自分の足先を唖然と見下ろしたまま。
(知らないのに、知ってる)
知らないはずのものが、考える間もなく自然と浮かんで流れ出た。
極当たり前に体に染み付いているかのような、懐かしさを感じさせるメロディ。
これは、何か。