My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
どくんどくんと、心臓が嫌な音を立てる。
まるで耳元で鳴っているかのように感じる、己の心音。
(やっぱり…あの時からだ)
パリの孤児院で、ノア化してしまったあの時。
確かに聴こえた、知らないようで知っている、誰かを出迎える声。
あれは誰の声だったのか。
そのことについてアレンとは言葉を交わせず終いで、雪には不可解な謎のままだった。
「お───」
「お待たせ!…アラ?」
急に黙り込む雪に、声を掛けても返答はない。
不自然に感じた神田が再度呼び掛けようとすれば、パタパタと響く足音が舞い込んだ。
高い声に、ぴんと雪の獣耳が立つ。
はっと玄関先に目を向ければ、丁寧に包装されたカップケーキが幾つも入った籠を持った女性が、まじまじと我が子を抱く雪の姿を見つめていた。
「ぁ…ごめん、なさい。吃驚させて泣かせてしまって…あやしてたら、寝てしまったんです」
「そうなの?それは面倒かけたわ。こちらこそごめんなさいねぇ」
「いいえ。すぐ泣き止んでくれて、良い子でした」
申し訳なさそうに笑う母親に、抱いていた男児をそっと返しながら雪もまた眉尻を下げて笑い返す。
「はい、これ。ハッピーハロウィン。楽しい一日をね」
「ありがとうございます。ほら、ユウも」
「…どうも」
カップケーキの入った籠を受け取り礼を言いつつ、隣の神田を促す。
渋々と頭を下げる彼の姿に、女性はまたくすりと口元を緩ませた。
「ん、んんー…」
「アラ、起きちゃったの?」
そこへ、体を移動されて意識が戻ったのか。
目を擦りながら母親の腕の中で男児が身を起こした。
「おねーちゃんに抱っこして貰っちゃって。よかったわねぇ」
「ねー…?」
「そう、狼のおねーちゃん」
ぱしりぱしりと眠たげに瞬く、くりくりとした青い目が母親に促されるままに、雪に向く。
あまり刺激しないようにと、雪は軽く笑いつつひらりと片手を振った。
と、
「わんわんっ!」
ぱっと見開いた青い目が雪を認識。
と同時に、小さな手は真っ直ぐに伸びた。
「え?」
雪の首元を飾っていた大きな首輪に繋がる、鎖に。