My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「わんわんー」
「っ!?わんわんじゃないからねボク!?これは狼!」
見下ろせば、女性が先程まで抱いていた幼い男児が一人。
2、3歳といったところか。
にっこにっこと笑みを浮かべて、雪の揺れる尾を興味津々に引っ張っていた。
「おーあみ?」
「狼、ね。お・お・か・み」
「おー?」
「えーっとね…わんわんじゃなくて、がうがう、というか…」
「…がうがう?」
「そう」
「がうがう!」
「そ、そう!がうが…って痛い痛い!引っ張るのはわんわんもがうがうも駄目!」
「なんだその阿呆な会話…」
きゃっきゃっと無邪気に笑いながら尾を引っ張る男児に、遠慮というものはない。
小さな子供相手に強く出られないのか、尾を引っ張られるままに耐えて耳を伏せる雪。
呆れた顔で見ていた神田だったが、その様子に仕方ないと溜息をつくと腰を屈めた。
「おいガキ」
伸びた手が、がしっと幼子の頭を鷲掴む。
屈んだ視線は一直線に男児に向けられたまま。
無表情を貫いていたが、鈍く赤く光る目はひんやりと冷たさを帯びていた。
「その尻尾を引っ張っていいのは俺だけだ。手を出すな」
「ちょっと、それどういう止め方…!」
神田の言葉に多少引っ掛かる所はあるものの、その効果は大いにあったようだ。
言葉の意味は理解していないが、感じる気配で怒られていることに気付いたのだろう。
小さな男児の手が尾から離れ、ほっと雪は安堵の息をついた。
のも、束の間。
「ふぇ…っ」
「え。」
「あ?」
小さな体が感情的な震えを纏う。
じんわりと大きな瞳に忽ち溜まっていく雫に、雪はぎょっとした。
神田の殺伐とした気配は、幼子には刺激が強過ぎたのか。
ぶるぶると大きくなる震えに、嫌な予感が走る。
「びぇえええ!」
「あぁあー!ごめんね泣かないでー!」
咄嗟に両手を伸ばして小さな体を抱きしめる。
と同時に、まるで小さな爆破の如く。
ぼろぼろと涙を零しながら、男児は大声で泣き出した。