My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「でも折角彼女が楽しもうとしてるんだから。彼はもう少し譲歩してあげなきゃね?」
ぱちんとウィンクしてくる女性に、投げ掛けられた神田の眉間に皺が寄った。
しかし反発することはなく、チッと小さな舌打ちを一つ落とすと、仕方なしにと一歩踏み出す。
片手を付いたのは、玄関の扉。
高い背丈によって作り出される影が、ぬっと女性の顔に掛かる。
「菓子を寄越せ。でないと悪戯するぞ」
ぼそりと告げられる低い声に、射抜くような瞳。
台詞はハロウィンさながらのものだが、決して優しい物言いではない。
綺麗なもの程、時として恐怖に映る。
目の前に立ちはだかる有無を言わさない空気の吸血鬼に、女性は息を呑んだ。
それは恐怖からだけではない。
長い睫の下にある、揺らめく深紅の混じった黒い瞳。
開いた口から垣間見える鋭い牙。
それらから、何故か目が離せなくなってしまって。
「………」
「おい、聞いてんのかよ。黙ってると手ぇ出すぞ」
「っ!は、はい喜ん…っって違うわ!お、お菓子ねお菓子っ待ってて、今持って来るから…!」
勢いよく自分の言葉を否定すると、顔を真っ赤にして慌てて家の中へと引っ込んでいく。
そんな女性を怪訝に見送る神田の後ろで、雪は唇をきゅっと結んだ。
揺れた尾が、べしっと強めに神田の背中を打つ。
「? んだよ」
「無自覚って罪だと思う」
「は?」
「美形なんて嫌いだ」
「あ?」
「ユウのバーカ」
「ァあ!?」
最初こそ疑問符を浮かべていた神田だが、いい加減雪の言葉に短い堪忍袋は限界を迎えたらしい。
それでもムスッとした表情のまま、雪は態度を変えなかった。
「んだよ、言われた通りにしただけだろ。なんで文句言われなきゃなんねぇんだよっ」
「言われた通りじゃない、色々無駄なオプションが付いてる」
「なんだよ無駄なオプションって。わかるように言え」
「言ったってどうせユウはわかんな───いたたた!?」
どうせ言った所で、この美形が服着て歩いているような存在(ルパン談)は変えられはしない。
異性に興味がないのは助かるが、自分の顔の破壊力に対しても無頓着なのは問題だ。
むすりとした顔で雪がそっぽを向いた時、急に神田の背を叩いていた尾に痛みが走った。