My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「夢の中で出会ったら、夢じゃなかったと言うか…」
「何それ。なんの話?」
「それが、私もよくわからなくて」
喋る縫いぐるみの少女。
それは不可解で謎な存在だった。
しかし彼女が身に付けていたリボンは、こうして自分の手元にある。
それが全てを物語っていた。
あれは夢ではなく、現実だったのだ。
「わからないけど…それでもいいかなって」
曖昧な記憶などではない。
雪の記憶にしかと刻まれている。
ごめんねと感情的に泣いてくれたことも。
眠らせてあげると子守唄を歌ってくれたことも。
家族だよと柔らかい腕で抱きしめてくれたことも。
「私にとって大切なものには変わりないから」
例え無機物だとしても、あの時潰れ掛けた雪の心に寄り添ってくれたのは、あの縫いぐるみだけだった。
リボンを見つめて笑う雪の表情は柔らかく、リナリーとミランダは目を見張った。
神田との仲を深めていく中で、感情の起伏も複雑に増えてきた雪。
だがこんなにも柔らかな表情を見た記憶はあまりない。
「…雪。やっぱり可愛いよ、そのままでも」
「ええ。飾り立てるものがなくても、それだけで充分だわ」
「へ?」
一体なんのことかと顔を上げた雪の目には、うんうんと頷く二人の姿が映った。
「神田が雪に惹かれた理由、なんとなくだけど私わかった気がする」
「えっなんなの?」
「雪だからだよ」
「……はい?」
「そうね。顔立ちとかスタイルとか、そういうものじゃないわね。雪ちゃんにだけあるものを、きっと神田くんはいち早く見つけたのよ」
「ミランダさん…(それ遠回しに顔もスタイルも良くないって言ってるんじゃ…まぁいいけど)」
再びうんうんと頷き合う二人は自己完結してしまったらしい。
理解し兼ねる所はあったが、聞いてもまた良い笑顔を返されるだけだろう。
(まぁいいけど、さ)
二人が楽しそうに笑っているなら。
それ以上突っ込むことなく、二人を見ながら雪も微かに口元を綻ばせた。
「あんさ、楽しそうな所悪ィんだけど」
それを邪魔したのは、背後から響くのっぺりとした声。