My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「ンだよ」
「…うん」
「だなら何が"うん"だってんだよ」
伊達に心を通わせてきた訳ではない。
雪の中で何かしら感情の変化が生まれているのはわかっている。
なのに返されるのは、なんとも意図の掴めない空返事。
つい眉間に皺を寄せそうになる神田の前で、雪は両手を握りしめた。
「見慣れないから、吃驚した……格好、良い」
俯きがちな顔を更に沈めて。
ぽそりぽそりと零れた最後の言葉は、耳を澄まさなければ聞こえない程。
(……………は?)
フリーズする、とは正にこのこと。
雪の口から零れたのは、確かな容姿を褒める言葉。
今の今まで、思い返せば一度足りとも神田が耳にしなかった、雪からの賞賛だった。
容姿のことを雪に"美形"という言葉で、ネタにされたことは度々ある。
恐らく雪はそういう類が嫌いなのだろうと、神田も薄々理解はしていた。
神田自身、見た目に拘る性格でもないため、そこを特別気に掛けたこともない。
だが、それを欲さないのかと問われれば答えは複雑だ。
好意を寄せてる相手からの賞賛ならば欲しいもの。
だからと言って無理強いさせるつもりはない。
雪が他人の容姿に興味がないことなど、何年も前から分かりきっていることだ。
だからこその衝撃だった。
今、雪はなんと言ったのか。
極々在り来たりな、しかし一度も感情を込めて紡いだことのない言葉を口にはしなかったか。
思わず無言で凝視する神田の目に、僅かに雪の顔が上がる。
伏せて隠れていた顔はじんわりと頬を染め、目を逸らし続けたままこちらを向いていない。
しかしそわそわと揺れる尾や、ぴんと神田に向けて立っている獣耳が物語っていた。
確かに雪の思いがこちらへと向いていることに。
「っ」
そう悟ってしまえば、神田の体の内側から溢れる感情。
じわじわと胸の奥底から染め上げていく熱い想い。
顔が熱くなる。
堪らず片手で囲うように覆った。