My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「こっちは」
「えっと…それは──」
続けて別の傷跡に触れて尋ねてくるユウに、次は何かと目を向けて。
「……」
見えた傷跡に、思わず口は閉じてしまった。
ユウが指し示したのは、二の腕の裏に薄らとだけど見える、真っ直ぐに切り込みが入った線。
これは…メスを入れられた時のものだ。
暗い地下の部屋で。
身体検査の時に、体を調べるからと麻酔をされて切り込みを入れられた時のもの。
…こんなものも残ってたなんて。
腕の裏側じゃ、普段はあまり目が届かないところ。
すっかり忘れていた傷跡に、嫌なことを思い出して咄嗟に返事はできなかった。
反応のない私に、顔を上げたユウが目で問いかけてくる。
…全部話すって、言ったんだから…沈黙は作れない。
「…昔…適性実験中に受けてた、検査の跡だよ」
視線は外して応えた。
…今更。
体は綺麗なままでいたかった、なんて淡い願望はない。
ファインダーの仕事は怪我が付きものだし。
この職を選んだ時点で、死も覚悟したんだから。
こんなところにある薄い傷跡なんて、注意して見なきゃ気付かないもの。
特に気にする程のものでもない。
ただ…思い出して、良い気分のものではないけれど。
「……」
ユウの反応はなかった。
視線を外したまま沈黙を受け入れていれば、不意に腕を掴まれて、ぐいと頭上に上げられる。
「っユウ?」
何かと目を向ければ、露わになった二の腕の傷跡に、さっきみたいに口付けるユウの顔がすぐ傍にあった。
目を瞑り、恭しくも見えるような優しい口付け。
傷跡に触れる柔らかい体温に、胸の奥がちりりとした。
言葉はないけれど。優しく労わってくれているかのような、そんなユウの行為に。
胸が、熱くなって。