My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「ありがとう」
胸に抱いたユウの拳を、抱きしめるようにして。目の前にいる彼へと感謝の気持ちを込めて、笑いかけた。
「こうして今は檻の中にいる身だけど…こうして、大切にしたい人が傍にいて。こうして、また笑えてるなら。…まだ私は、前を向いていられる」
あの時ユウにノアのことを伝えていれば。
そう思う場面は幾つもあるけれど、振り返って後悔するのは止めよう。
それよりも、今どうすべきか。
過去より未来を見つめていたい。
私が、守りたいものの為に。
「……」
ユウの返事はなかった。
ただ、胸に抱いていた拳が微かに揺れた感覚は肌で感じた。
「……お前って、」
抱いたユウの拳が解かれる。
包んでいた私の手を逆に包み込むように、握り返してくる。
ひんやりと微かに冷たい、心地良くて優しい手。
「やっぱり馬鹿だ」
再び"馬鹿"と罵りながら、でもその声は優しく静かなものだった。
「馬鹿なくらい真っ直ぐで、まっさらで。到底真似できそうにねぇよ」
「…それって、貶してるの?」
ユウの褒め言葉って、時々わかり辛い時あるから。
褒めてるのか貶してるのか、よくわからずに問えば、確かに目の前の口元は優しく弧を描いた。
「違ぇよ。馬鹿」
……それでもやっぱり馬鹿言われたんだけど。
凄く優しい顔をしてたから、まぁ…いっか。