My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
気付けば、そんなことを話していた。
ユウに伝えるというより、自分で振り返るかのように。
今まで誰にも話さなかった過去のこと。
抱え続けていた、私の弱い心を。
「本当に欲しいと思ったものは、手に入らない。…私は行動に起こすのが、遅いから」
いつも、そう。
「ただ親の迎えを待つばかりで、小母さんの所でずるずる縋り続けて。…やっと自分から教団に足を向けても、周りの大人達の言うことに振り回されて…疑問はあったのに、イノセンスの適性実験を受け入れて、従い続けた」
ピンチの時に助けに来てくれるヒーローなんて、何処にもいない。
それを悟ったから、小母さんの下を離れて教団に赴いたのに。
疑問を抱きながらも、実験に身を捧げ続けた。
「そこで父のイノセンスをこの手で壊して…また、大事なものを失って。縋りたいものさえ、何もなくなった」
父も母も。
帰りたい場所も、帰ることのできる場所も。
何もなくなって途方に暮れていた私に、一つの道を示したのは、あの人。
「一人途方に暮れていた私に…両親の情報をくれて、実験室から解放してくれたのは、クロス元帥だった。生きろって、私に言ってくれた」
それがまやかしの希望でも。
何か縋るものができるならと、私に亡き両親の証を残してくれた。
「…そうして私は…いつも、何かに頼ってばかり」
でも、弱い自分を思い知って。そんな頼りない自分が嫌で。
だから、強くなろうと決めた。
この世は平等だなんだと謳っても、所詮は弱肉強食。特に戦争を行ってるこの教団では。
だからこそ、イノセンス不適合者である私に、特別な力なんてないけど。
ならせめて、心だけでも強くなろうと自分に誓った。
「だから、手を伸ばすのをやめたの。情けない自分が嫌で。求めても辛いだけなら、もう、そんな思い…したくないから」
じっと、目の前にあるユウの拳を見つめたまま。一度言葉を切って、膝に乗せていた自分の拳を解いた。
「──…でもね、」
そう、と手を伸ばす。
ジャラリと揺れる鎖の音。
両手で包むように触れたのは、ユウの拳、だった。